2025年7月19日、米メディア「The Information」は、エヌビディア(NVDA)が中国でのAIチップ販売再開にあたって複雑な供給上の障害に直面していると報じました。トランプ大統領による規制緩和で一時的に中国への販売が再許可されたものの、実際の供給体制には大きな課題が残されているようです。
限られた在庫、再生産の見通しは不透明
報道によると、エヌビディアは現在、H20チップの在庫を限られた数量しか保有しておらず、新たに生産を再開する予定もないとされています。H20は、現在の米国輸出規制下で中国市場向けに販売可能な中で最も高性能なAIチップです。
同社は2025年第1四半期に、規制によって使用できなくなったH20チップ関連の在庫評価損として45億ドルを計上しており、それ以降のウエハー製造についてはキャンセルしていたとされています。
TSMCの生産ラインも転用済み
H20チップの製造を担当していた台湾積体電路製造(TSMC)は、現在フル稼働状態であり、H20向けの生産ラインはすでに他の顧客向けチップに転用されているとのことです。新たに製造ラインを立ち上げるには約9か月かかると、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは北京でのイベントで説明しました。
アップグレード版H20にも供給リスク
さらに、H20の改良版に搭載予定の高帯域メモリ(HBM)についても課題があります。サプライヤーである韓国SKハイニックスが提供可能な数量は限られており、今後の供給体制に懸念があるとされています。また、米政府による輸出許可が改良版H20にも適用されるかどうかは現時点で不明です。
中国市場への本格復帰には時間がかかる見込み
中国はかつてエヌビディアの売上の21%を占めていましたが、近年の輸出規制でその比率は13%に低下しています。同社はH20チップを含む既存在庫の出荷を続けながら、中国の大手顧客と連携し、将来的な製品開発のニーズやブラックウェル・アーキテクチャをベースにした新製品の要望についてヒアリングを進めているとのことです。
ただし、米国政府からより高性能なチップの販売許可を得られなければ、現時点での競争力維持は困難です。ファーウェイなど地元ライバルとの競争も激化しており、政策と供給の両面で柔軟な対応が求められる局面となっています。
まとめ
エヌビディアが中国市場で再びプレゼンスを高めるには、製造体制の立て直しと規制緩和の両面が必要不可欠です。現時点では在庫対応にとどまっており、短期的な成長余地には限界があるものの、今後の展開によっては再成長のきっかけを掴む可能性もあります。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA