ASML株が急落!成長警戒と関税リスクで投資家が動揺

2025年7月16日、オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディング(ASML)の米国株が一時9.9%下落しました。第2四半期の決算内容自体は好調だったにもかかわらず、2026年の成長が保証できないとの経営陣の発言が、市場のセンチメントを大きく冷やしました。

売上・受注ともに市場予想超えも、見通しの不透明感が重荷に

ASMLは第2四半期の受注額を55.4億ユーロと発表し、アナリスト予想を上回りました。売上も通年で15%増を見込んでおり、ガイダンスの上限に近い水準を維持しています。にもかかわらず、株価が大きく下落した背景には、「2026年の成長は準備しているが、確約はできない」というクリストフ・フーケCEOのコメントが強く影響しました。

成長期待の後退でアナリストも警戒姿勢に

投資銀行ジェフリーズはすでにASML株を「買い」から「ホールド」に格下げしており、2026年の売上は前年比2%減少すると予測しています。市場コンセンサスでは7%の成長が期待されていたことから、今回の経営陣の慎重なトーンは大きな失望を招く形となりました。

関税リスクがASMLを直撃、トランプ政権の対EU政策が波紋

ASML株に重くのしかかるもう一つの要因が、米国と欧州連合(EU)の間で進行中の関税問題です。トランプ大統領は8月1日からEU製品に対して30%の関税を課すと表明しており、これがASMLの主要顧客であるインテル(INTC)など米国企業への輸出に影響を与える可能性があります。

ポートフォリオマネージャーのムーン・スラナ氏は、「関税がASML製品にかかれば、米国の半導体自給自足戦略と矛盾する。最終的には消費者がそのコストを負担することになる」と指摘しています。

他の半導体装置メーカーも連れ安

ASMLの株価下落は業界全体にも波及しました。ラムリサーチ(LRCX)は4.1%安、KLA(KLA)は3.1%安、アプライド・マテリアルズ(AMAT)は3.8%安と、装置メーカーがそろって売られる展開となりました。

投資家が注視すべきポイント

  1. 関税動向と米欧貿易交渉:8月1日を控え、ASMLに課される可能性のある関税が、株価に直接的な影響を及ぼします。
  2. 2026年の業績ガイダンス:現時点で明確な数字を出していないため、今後の経営陣のコメントや業界動向に注目です。
  3. AI関連投資の持続性:中長期ではAI関連の需要が堅調であることから、長期投資家にとっては押し目買いの好機とも捉えられます。

まとめ

ASMLは高い技術的優位性を有し、AI時代における半導体製造の要となる企業です。しかし、短期的には関税リスクや地政学的な不透明感が投資判断に影響を与える状況です。市場の過敏な反応をどう読み解くか、投資家にとっては今後の経営陣の発言と米欧の政策動向がカギを握ることになりそうです。

*過去記事「ASML決算速報:2026年の成長に慎重姿勢 それでもAI需要が追い風に

最新情報をチェックしよう!