マイクロソフト、AI時代に向けて社員に「自らスキルを磨け」と促す

2025年7月、米テック系メディア「The Information」は、マイクロソフト(MSFT)が実施した人員削減と、それに続く社内のAI活用促進について報じました。同社は2025年に入ってから約15,000人の社員を削減し、歴史的にも大規模なリストラを進めています。その一方で、残った社員にはAIスキルの自己研鑽を強く推奨しています。

営業部門に求められるAI活用

報道によると、マイクロソフトの中小企業向け営業部門を統括するトラビス・ウォルター氏は、社員向けのミーティングで「AIツールを使うことが今や不可欠であり、自らのAIスキルに投資するべきだ」と述べたとされています。具体的には、顧客情報の把握や営業資料の作成といった業務において、社内AIツールの活用が推奨されています。

実際、一部のマネージャーは営業社員のパフォーマンス評価において、AIツールの使用状況も参考にしているとのことです。

売上好調でもリストラは実施

ウォルター氏の部門は、2025年6月までの四半期でアジュール(Azure)やCopilot製品の売上が目標を超えたと報告しています。「オリンピック級の四半期だった」との発言からも、業績そのものは堅調であることがうかがえます。

しかしその一方で、人員削減は進められており、会社全体としてのコスト構造見直しとAIインフラへの投資拡大が背景にあるとみられます。2025年6月までの12か月間における資本支出は800億ドルに達し、前年の560億ドルから大幅に増加しました。

組織再編と役職の変更

マイクロソフトは営業部門の再構築も進めており、顧客との接点を簡素化するために「ソリューション領域」を従来の6つから3つに統合する方針です。CopilotやOffice 365を含む「ビジネスソリューション」、アジュールなどの「クラウド」、そして「サイバーセキュリティ」に分類し、顧客が混乱しないよう調整を図っています。

さらに、「テクニカルスペシャリスト」と呼ばれていた役職を「ソリューションエンジニア」に置き換え、より実践的な技術支援を提供できる体制に移行中です。

AI活用の社内文化醸成

同社ではAI活用を促すため、営業チームでのコンテストも実施されています。AIを活用して業務を効率化した優秀な事例に対しては、ギフトカードが贈られるなど、インセンティブも設けられています。

ただし、こうした改革の裏で、海外拠点から本社イベントに参加するために渡米した社員が、現地で解雇を言い渡され、帰国を余儀なくされたという事例も報じられており、組織改革の厳しさも垣間見えます。

まとめ

マイクロソフトはAI時代における企業成長を見据えて、積極的な人材再配置とスキル転換を進めています。業績が好調であるにもかかわらず行われた人員削減は、急拡大するAI関連支出とのバランスをとるためのものと見られます。今後も企業内外で、AIスキルが重要な競争力として問われる時代が続くことは間違いなさそうです。

*過去記事「AI時代の人員戦略:マイクロソフトが再びレイオフを実施

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