中国のファーウェイが、人工知能(AI)分野における米国の半導体大手エヌビディア(NVDA)の支配を揺るがす動きを見せています。同社は、次世代AIチップの設計を根本から見直すことで、より汎用性の高い用途に対応可能な新型チップの開発を進めているとThe Informationが報じています。
エヌビディア依存を減らす狙い
ファーウェイが開発を進める新型チップは、現在の専用設計(ASIC)から、より汎用的なグラフィックス処理ユニット(GPGPU)に近づく構造を採用する見込みです。これにより、エヌビディアのCUDAソフトウェア向けに書かれたAIコードを、ファーウェイ製チップでも動作させることが可能になると期待されています。
これは、中国国内で依然としてエヌビディア製品がAI開発の主流である中、ソフトウェア互換性の壁を乗り越えようとする動きです。実際、アリババやディープシークといった主要企業のAIモデルは、現在もエヌビディア製チップで訓練・運用されています。
次世代チップ「Ascend 920」は2026年以降に本格展開か
ファーウェイが目指すのは「Ascend 920」と呼ばれる次世代チップで、同社がこれまで展開してきた特定用途向けチップとは異なり、より幅広いAIタスクに対応可能な設計です。複数の開発チームがさまざまな設計案を検討しており、量産は早くとも来年以降になると見られています。
ただし、ファーウェイはこれまで汎用GPU設計の経験が少なく、アーキテクチャの最適化や製造装置の制約も残っています。米国による輸出規制の影響で、最先端の製造技術へのアクセスが制限されていることもハードルの一つです。
中国のAI開発環境を左右する可能性も
現在、米国の規制によりエヌビディアの中国向けチップ供給は大幅に制限されています。同社のジェンスン・フアンCEOも、こうした規制が中国市場(500億ドル規模)へのアクセスを事実上断っていると指摘しています。
このような背景から、中国企業にとって代替手段の確保は急務です。ファーウェイの新型チップが十分な性能と互換性を備えることができれば、小規模な開発者やスタートアップを中心に導入が進む可能性があります。
今後の展望
ファーウェイがAIチップ市場でエヌビディアに迫るには、性能だけでなく、開発者向けのソフトウェア環境の整備も不可欠です。特にCUDA互換性の確保や開発ツールの拡充がカギとなります。
今後の展開次第では、中国国内のAIエコシステムに大きな変化をもたらす可能性があります。2026年以降、ファーウェイがどこまで市場に食い込めるか注目されます。