ロビンフッド・マーケッツの最高経営責任者(CEO)であるブラッド・テネフ氏が共同設立した人工知能スタートアップ「ハーモニックAI」が、数学問題に特化したAI開発を目指し、新たに1億ドルの資金を調達しました。調達後の企業評価額は8億7500万ドルに達しており、ユニコーン企業に迫る規模となっています。
数学問題に特化したAI「アリストテレス」の開発を推進
ハーモニックAIは2023年にカリフォルニア州パロアルトで設立され、テネフ氏はエグゼクティブ・チェアマン(非業務執行役)として経営に関与しています。CEOを務めるのは、以前自動運転スタートアップHelm.aiを率いていたチューダー・アキム氏です。
この企業の目標は「人間を超えるレベルで数学問題を解決するAI」の開発であり、2025年中に旗艦モデル「Aristotle(アリストテレス)」を研究者や一般に公開する計画です。最終的には、未解決の数学的難問や物理学・計算機科学の問題にも取り組むことを視野に入れています。
大規模言語モデルとは異なるアプローチ
テネフ氏によれば、ハーモニックAIは「数学ファースト」のアプローチを採用しており、一般的なチャットボットに使われる大規模言語モデルとは一線を画しています。特に、AIが事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション(幻覚)」問題に対しては、形式検証(Formal Verification)という数学的手法を使い、すべての出力が正確であることを保証する仕組みを導入しています。
この手法により、「AIの思考過程のすべてのステップが検証可能である」とテネフ氏は説明しており、今後のAI開発の主流になる可能性があると語っています。
評価額の上限には慎重な姿勢
今回の資金調達ラウンドはKleiner Perkinsが主導し、Sequoia Capital、Index Ventures、Paradigmも参加しました。以前のラウンドではSequoiaとIndexから7500万ドルを調達しており、今回のシリーズBラウンドで累計資金調達額は1億7500万ドルに達します。
テネフ氏は、「最も高いオファーを受け入れるのが正しいとは限らない」と述べ、評価額よりも長期的な企業成長を優先する姿勢を見せています。
数学AIがもたらす可能性に注目
ハーモニックAIは、言語処理に留まらず、論理的かつ検証可能なAIを目指すという点で注目を集めています。テクノロジーがより高度な問題解決へと進化するなか、こうした「数理知能」へのアプローチが今後のAI業界にどのような影響を与えるのか、注目されます。