2025年7月9日、エヌビディア(NVDA)が米国市場での歴史を塗り替えました。同社は取引時間中に一時、時価総額4.012兆ドルに達し、米国企業として初めてこの水準を突破。最終的には162.88ドルで取引を終え、終値ベースでは3.97兆ドルとわずかに届かなかったものの、終値時価総額で過去最高を更新し、アップル(AAPL)の記録を上回りました。
需要を牽引する「推論型AI」と「AIエージェント」
今回の急騰の背景には、AI市場の急拡大とそれに伴うデータセンター投資の激増があります。バーンスタインは、建設中および計画中のAIデータセンターへの投資総額が7,500億ドルに達したと試算しています。この巨額の支出は、AIアクセラレータで圧倒的なシェアを誇るエヌビディアにとって大きな追い風です。
特に注目されているのが、「推論型AI(Reasoning AI)」や「AIエージェント」と呼ばれる次世代AIの存在です。オープンAIの「o1」や「o3」、アルファベットの「Gemini」、アンソロピックやxAIによる新モデルなど、ユーザーの問いに対して多段階の思考を行い、ウェブ検索や情報収集を自動で実行するモデルの普及が進んでいます。
これらのモデルは従来以上に大量の計算処理を必要とし、エヌビディアの最新チップ需要をさらに高めています。
時価総額はS&P500の半数以上に匹敵──他社との圧倒的な差
エヌビディアの4兆ドルという時価総額は、S&P500指数に含まれる下位216社の合計を上回り、消費財、エネルギー、不動産、素材、公益の各セクター全体の時価総額をも凌駕する水準です。
さらに、ブロードコム(AVGO)、TSMC、ASML、AMD、テキサス・インスツルメンツ(TXN)、クアルコム(QCOM)、アーム(ARM)、アプライド・マテリアルズ(AMAT)、マイクロン(MU)、ラムリサーチ(LRCX)、KLA(KLAC)といった主要半導体企業11社を合計しても、エヌビディア1社の時価総額には届きません。
AI革命の次のステージに突入
ウェドブッシュ証券のダン・アイブス氏は、「これはAI革命の第二章であり、テック業界全体が次の成長フェーズに入ったことを象徴している」と評価。同氏は引き続きエヌビディア株を「アウトパフォーム」とし、目標株価を175ドルに設定しています。
次なる焦点は「5兆ドルクラブ」への到達。今後もAIを中心とした市場拡大と、企業の設備投資拡大によって、エヌビディアの成長ストーリーはさらに加速しそうです。