テスラ株が急落──イーロン・マスク氏の政治活動が投資家心理を揺るがす

2025年7月7日、テスラ(TSLA)の株価が急落しました。背景には、最高経営責任者であるイーロン・マスク氏の政治的動きが大きく影響しています。マスク氏は7月6日、自身のSNSプラットフォーム「X」で新党「アメリカ・パーティー」の設立を発表し、これが株式市場に動揺をもたらしました。

「アメリカ・パーティー」設立表明と市場の反応

マスク氏の投稿には1.25百万票以上が集まり、65.4%が新党設立に賛成しました。この投稿は9000万回以上閲覧されており、大きな話題となっています。しかし、こうした政治活動はテスラの事業にとって不確実性をもたらす要因と受け止められています。

週明け7日の取引では、テスラの株価が7.26%下落し、293.94ドルまで落ち込みました。これはS&P500(SPX)の0.79%安、ダウ工業株30種平均(DJIA)の0.94%安を大きく上回る下落幅です。

アナリストの格下げとEV優遇措置の消失

ウィリアム・ブレアのアナリスト、ジェド・ドーシャイマー氏は、テスラの株式格付けを「買い」から「ホールド」に引き下げました。彼は目標株価を設定せず、「トランプ大統領の新法案『One Big Beautiful Bill』により、最大7500ドルの電気自動車(EV)購入税額控除が撤廃され、テスラの排出枠売却収益にもリスクが生じる」と指摘しています。

マスク氏はこの法案に強く反対しており、政府支出の拡大による財政赤字の増加を問題視しています。

自動運転タクシーとロボット開発が進行中

ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブス氏は、「テスラにとって今は極めて重要な時期であり、マスク氏が政治に深く関与することは望ましくない」とコメントしています。テスラは自動運転タクシーの商用化と2026年からのヒューマノイド・ロボットの販売を計画していますが、現時点でこれらの売上は立っていません。

EV販売不振とブランドイメージの低下

2025年上半期、テスラは約72.1万台の車両を販売しました。これは前年同期比で13%減となり、ウォール街の予想である97万台を大きく下回る結果です。年間販売台数も180万台から170万台へと下方修正されています。

売上減少の一因として、マスク氏の政治的発言がリベラルなEV購入層を遠ざけた点が挙げられます。4月の第1四半期決算説明会では、テスラの経営陣もブランドに関する課題を認識していることを明らかにしています。

株主の訴訟は困難に

テスラが法人登記地をデラウェア州からテキサス州に変更したことで、株主が訴訟を起こすハードルは高くなっています。現在、テスラに対して訴訟を起こすには、少なくとも3%の株式を保有する必要があり、それは約300億ドル相当のポジションに相当します。この条件を満たすのは、バンガードなどの大型インデックスファンドとマスク氏自身に限られます。

トランプ大統領の反応と政界の緊張

トランプ大統領は「マスク氏は過去5週間で完全に“脱線”した」と自身のSNSで批判しました。さらに「第三政党はアメリカでは成功した前例がなく、混乱と混沌をもたらすだけ」と述べました。

リッチモンド大学の法学者カール・トバイアス氏は、「2026年の中間選挙を前に政局はさらに不安定化する可能性がある」との見解を示しています。

投資家はマスク氏の経営専念を望む声が多数

財務長官のスコット・ベセント氏も、「マスク氏の各企業の取締役会は、彼が本業に戻ることを望んでいる」と述べ、政治から距離を置くよう促しています。

アイブス氏はテスラ株に対して依然として「買い」評価を維持し、目標株価を500ドルとしていますが、短期的には株価が圧力を受けると予想しています。

テクニカル分析の観点では300ドルが支持線

Fairlead Strategiesの創業者ケイティ・ストックトン氏は、テスラ株には300ドル付近にテクニカル的なサポートラインがあると分析しています。これは過去の売買実績に基づいた価格帯であり、投資家の注目ポイントとなっています。

まとめ

マスク氏の政治活動がテスラ株に与える影響は無視できません。自動運転技術やロボット事業への期待が高まる一方で、EV本業の苦戦と政治的リスクが投資判断を複雑にしています。2025年7月23日の第2四半期決算は、今後のテスラの方向性を占う重要なイベントとなりそうです。

*過去記事はこちら テスラ TSLA

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