2025年現在、アメリカの肥満治療薬市場ではイーライ・リリー(LLY)とノボ・ノルディスク(NVO)が圧倒的な存在感を放っています。両社が販売するGLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド」や「ウゴービ」は高い効果を示し、市場をけん引しています。
しかし、この巨大市場に新たなプレイヤーが続々と参入し始めています。
モーニングスターは、肥満治療薬市場が2031年までに2,000億ドル規模に拡大すると見込んでいます。一方、ゴールドマン・サックスは2024年4月に予測を下方修正したものの、それでも2030年には950億ドルの市場になるとしています。市場の魅力は衰えておらず、多くの企業が研究開発に注力しています。
ここでは、注目すべき競合企業とその治療薬候補について紹介します。
アムジェン(AMGN):月1回の投与で差別化を図る
米国大手のアムジェンは、肥満治療薬「マリタイド(MariTide)」で市場参入を目指しています。この薬の特徴は、週1回の注射が必要な既存の治療薬と異なり、月1回の投与で済む点にあります。
中間試験では、1年間の投与で平均20%の体重減少が確認されました。効果は良好ですが、副作用による離脱率の高さが課題となっており、現在進行中の後期試験の結果が注目されています。
バイキング・セラピューティクス(VKTX):デュアル作用で挑戦するバイオ企業
バイキング・セラピューティクスは、臨床段階のバイオテクノロジー企業で、GLP-1とGIPの両方に作用する注射剤「VK2735」の後期試験を2025年6月に開始しました。これにより、血糖値と食欲の両方をコントロールし、体重減少を促します。
さらに、経口薬の開発も進めており、初期試験では高用量群の被験者が4週間で平均8.2%の体重を減らす効果が示されました。
ジーランド・ファーマ:ロシュやベーリンガーと共同開発
デンマークのジーランド・ファーマは、ロシュやベーリンガーインゲルハイムと提携し、次世代の肥満治療薬を開発中です。GLP-1/GIPの二重受容体作動薬(Dapiglutide、Survodutideなど)に加え、満腹感を高めるアミリンアナログ「Petrelintide」にも注力しています。
アミリンアナログは、既存のGLP-1薬と比べて副作用が少ない可能性があるとして、期待が高まっています。
ストラクチャー・セラピューティクス:副作用軽減と筋肉量維持に焦点
サンフランシスコを拠点とするストラクチャー・セラピューティクスは、アミリン受容体作動薬「ACCG-2671」の初期試験を2025年末までに開始する予定です。前臨床試験では、体重の大幅な減少に加え、筋肉量の維持と副作用の軽減が確認されています。
また、経口GLP-1薬の開発も進めており、複数のアプローチで肥満治療市場に参入しようとしています。
アストラゼネカ:経口薬で利便性を追求
イギリス最大の製薬企業であるアストラゼネカは、経口GLP-1薬「AZD5004」を開発中です。この薬は中国のEccogeneから2023年にライセンスを取得したもので、現在は中間試験が行われています。
2型糖尿病患者を対象とした初期試験では、4週間の服用で平均5.8%の体重減少が見られ、消化器系の副作用も軽度から中等度にとどまりました。さらに、注射型の肥満治療薬も2種類開発中です。
ロシュ・ホールディングス:経口薬と注射薬の両方を開発
スイスのロシュ・ホールディングスは、ジーランド・ファーマとの共同開発を含め、3種類の肥満治療薬を手がけています。経口タイプと注射タイプの両方が開発中で、単一および二重受容体作動型の薬が含まれています。
特に経口薬に対する期待が高い一方で、一部では副作用への懸念も指摘されています。注射剤は中間試験段階にあり、経口剤は初期段階の試験が進められています。
今後の展望:競争が激化する肥満治療薬市場
肥満治療薬市場は今後も急速な成長が見込まれており、イーライ・リリーとノボ・ノルディスクの二強体制に挑む企業が次々と登場しています。
経口薬、月1回の注射、新たな作用機序など、各社が独自の強みを活かして開発を進めており、患者にとっての選択肢は確実に広がっています。投資家や医療関係者にとっても、今後の動向から目が離せない注目分野です。