2025年7月2日、アメリカの大手医療保険会社センティーン(CNC)が、医療保険市場に激震をもたらしました。1日の夜、センティーンは、米国医療保険制度「オバマケア(ACA)市場(Marketplace)」向けに提供している保険プランに関する新たなデータが予想以上に悪かったとして、2025年の通期業績ガイダンスを撤回しました。
この発表を受けて、翌2日の米国市場でセンティーンの株価が40%も急落しました。JPモルガンは同社株の格付けを引き下げ、米国みずほ証券のアナリストは「2025年の1株当たり利益は、従来ガイダンスの半分になる可能性がある」との見解を示しています。
相次ぐ医療保険セクターへの逆風、次はACA市場
ここ1年半の間に、メディケア・アドバンテージ・プランに関する悪材料が度々市場に打撃を与えてきました。今回は、その矛先がACA(医療保険マーケットプレイス)に向いています。
ACAプランは、個人向けの比較的低価格な保険商品であり、連邦政府からの補助金によって支えられています。現在、全米で約2,430万人がこの制度を利用しています。センティーンはその主要プレイヤーの1社です。
他の関連企業の株価も影響を受けました。モリナ・ヘルスケア(MOH)は20%、オスカー・ヘルス(OSCR)は14%、エレバンス・ヘルス(ELV)は9%下落しました。
業績予想を大幅下方修正へ
センティーンは2025年4月時点で、「2025年の調整後希薄化1株当たり利益(EPS)を7.25ドル以上、売上高を1,785億~1,815億ドル」と予想していました。しかし、今回のデータ受領により、その予想は白紙に戻されました。
同社によると、マーケットプレイス加入者の72%に関するデータを確認した結果、想定よりも加入者の成長が鈍化し、さらに加入者の健康状態が悪化していることが判明しました。この初期データは、2025年のEPSに2.75ドルのマイナス影響を与える可能性があるとしています。
政治的リスクも重なり、先行きは不透明
センティーンにとって不安材料は保険内容だけではありません。ACAプランを支える連邦補助金は2025年末で終了する予定であり、現在共和党が進める法案によって今後の制度の方向性にも大きな影響が及ぶ可能性があります。
加えて、同社は1日の夜に「メディケイド・プラン」でも医療費の増加が見られ、今後医療費支出の割合が第2四半期に上昇すると発表しました。メディケイド部門はセンティーンの売上の大部分を占めているため、影響は無視できません。
米国みずほ証券のアナリスト、アン・ハインズ氏は「現時点でセンティーンの2025年EPSガイダンスが半減しても不思議ではない」と述べています。
センティーンの株価は、すでに過去12ヶ月で15%下落していましたが、今回の急落により、投資家の不安はさらに高まっています。