アップル、生成AI競争で出遅れか──Siri刷新とPerplexity買収の行方

2025年、アップル(AAPL)は生成AI分野で競合に後れを取っているとの見方が広がっています。iPhoneを軸とした自社エコシステムにAIを統合する一方、オープンAIやアンソロピックなど外部企業の技術導入、あるいはAIスタートアップの買収も視野に入れています。しかし、これらの方針はいずれもアップルの堅牢なビジネスモデルに対して新たなリスクをもたらします。

Siriの進化が停滞、iPhone売上も伸び悩み

アップルは音声アシスタント「Siri」のAI機能強化を繰り返し延期しています。本来であれば、Siriの刷新はiPhone売上を再び成長軌道に乗せる鍵になるはずでしたが、2022年度に2,050億ドルに達して以降、売上は横ばいの状態が続いています。

この状況はブランドロイヤルティにも影響を与えています。アルファベット(GOOGL)はAndroid端末にAIアップデートを頻繁に行っており、サムスン電子や中国のスマートフォンメーカーも積極的にAI機能を取り入れています。

ジョナサン・アイブ氏関連企業の動きが市場に波紋

2025年6月、証券会社ニーダムのアナリストであるローラ・マーティン氏は、アップル株の投資判断を引き下げました。理由は、オープンAIが元アップルのチーフデザインオフィサーであるジョナサン・アイブ氏が関与するスタートアップを64億ドルで買収したことにあります。この動きにより、スマートフォンの代替となる新たなデバイスが登場する可能性が高まったと指摘されています。

ブルームバーグによると、アップルは自社AIの開発に加え、オープンAIやアンソロピックが提供する生成AIをSiriに組み込む選択肢を検討しています。さらに、検索特化型AIスタートアップであるPerplexityの買収も視野に入れているとされています。

外部AI技術への依存がビジネスモデルを揺るがす

アップルは長年にわたり、自社プラットフォームを厳格に管理することで他社との差別化を図ってきました。そのため、外部AI技術への依存はアップルのコントロール力を損ない、ビジネスモデル全体にリスクをもたらす可能性があります。

独立系アナリストのリチャード・ウィンザー氏は「サードパーティの技術を使えば、制御できないリスクを企業構造に取り込むことになる」と指摘しています。さらに、オープンAIはマイクロソフト(MSFT)、アンソロピックはアマゾン・ドット・コム(AMZN)の支援を受けていることから、競合企業の基盤に依存する構造となる懸念もあります。

Perplexity買収は防御策か、それとも迷走の証しか

Perplexityの買収は、外部企業への過度な依存を避けるための防御的な一手と見ることもできます。しかし同社は検索AIに特化しており、アップルはすでにアルファベットとの間で検索連携による収益分配契約を締結しています。2022年にはアルファベットからの支払いが200億ドルに達していたとする裁判資料も存在します。

UBSのアナリストであるデイビッド・ヴォグト氏は「Perplexityの買収はアップルのAI戦略が限定的であることを示す防御的な動きに過ぎず、成長を再加速させるには不十分だ」と分析しています。

Perplexityの評価額は140億ドルとされており、アップル史上最大規模の買収案件となる可能性があります。ただし、アップルの年間フリーキャッシュフローの約10%に相当する水準に過ぎません。また、PerplexityもサードパーティのAIモデルに依存しており、技術的な独自性には限界があります。

著作権問題と複雑化するAI同盟関係

Perplexityは現在、著作権侵害の疑いでニューズ・コーポレーションから訴訟を受けています。同社はダウ・ジョーンズの親会社であり、2024年3月にはオープンAIと複数年にわたるパートナーシップ契約を締結しています。

アップルがPerplexityを買収すれば、著作権リスクへの対応だけでなく、アルファベットやオープンAIとの複雑な関係の調整も迫られることになります。こうした状況が、同社のAI戦略をさらに難しい局面へと導く可能性があります。

*過去記事はこちら アップル AAPL

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