2025年、エヌビディア(NVDA)をはじめとした半導体企業の株価が大きく注目を集める一方で、本当のAI成長の果実を収穫するのはソフトウェア企業かもしれません。ブラックロックのテクノロジー投資責任者であるトニー・キム氏は、AI開発の次のステージがまさにソフトウェア産業であると指摘しています。
ソフトウェア企業がAI社会をつなぐ架け橋に
キム氏によると、AIはまだ始まったばかりであり、真の普及はこれからです。AIアシスタントが日常生活で広く活用されているわけではなく、企業内でAIエージェントが当たり前に使われている状態にも至っていません。自動運転やロボティクスといった物理的なAIも大規模な展開にはまだ至っていないのが現状です。
このような段階にある今、AIを社会に実装する鍵を握っているのがソフトウェア企業です。彼らは、AIの可能性を日常生活や業務の中に取り入れ、実用レベルにまで引き上げる重要な役割を担っています。
ソフトウェア業界の2つの主軸:エンタープライズとコンシューマー向け
ソフトウェア業界には主に2つのカテゴリがあります。ひとつは企業向け(エンタープライズ)アプリケーションで、もうひとつは消費者向け(コンシューマー)アプリケーションです。
消費者向けの例としては、会計ソフトを提供するインテュイット(INTU)や語学学習アプリのデュオリンゴ(DUOL)が挙げられます。一方、企業向けには、顧客管理システムで知られるセールスフォース(CRM)や設計ソフトを手がけるオートデスク(ADSK)があります。
なぜ今ソフトウェア銘柄に注目すべきなのか?
ブラックロックのファンダメンタル・エクイティ部門の分析によれば、ソフトウェア業界には以下のような強みがあります。
- 差別化されたAIシステムの構築
ソフトウェア企業は独自のデータセットを活用して、競合他社との差別化が可能です。これにより、AIの精度と提供価値を高めることができます。 - AIエージェントの拡大
意思決定を自動で行う「AIエージェント」の登場により、在庫管理、医療診断、建築設計、プログラミング支援など、あらゆる分野に応用が広がっています。 - スケーラビリティと高利益率
ソフトウェア企業はクラウドベースで展開されるため、ハードウェアに依存せず柔軟にスケールを増減することが可能です。さらに、サブスクリプション型のビジネスモデルにより、利益率は80%前後と高水準を維持しています。 - 安定した収益モデル
毎月または毎年の定期支払いをベースとしたモデルは、将来のキャッシュフローを予測しやすく、投資リスクの軽減にもつながります。 - 高いスイッチングコストによる顧客維持
特定業界向けに最適化されたソフトウェアは、導入後の切り替えが難しく、長期的な顧客維持に貢献します。
エヌビディアの成長と「AIファクトリー」構想
もちろん、AIインフラの根幹を支えるエヌビディアの重要性も変わりません。ジェンスン・フアンCEOは決算説明会にて、「AIファクトリー」と呼ばれるAI開発・運用施設の需要が世界的に急拡大していると語っています。これにより、中国市場での売上減少を相殺できているとしています。
AIの進化に伴い、こうしたAIファクトリーの整備は今後も続く見通しであり、エヌビディアの成長余地は依然として大きいといえます。
今後注目すべき投資先は「AIを活用する企業」
AIという技術は、インフラ(半導体)から応用(ソフトウェア)へとその価値の源泉が移ってきています。特に、自社のソリューションにAIを取り入れ、独自性と収益性を高めているソフトウェア企業は今後の注目株といえます。
持続的な成長を遂げ、高いユニットエコノミクス(1製品あたりの利益率)を示している企業を中心にポートフォリオを構築することで、AIの恩恵を中長期で享受できる可能性があります。