人工知能を活用した融資プラットフォームを展開するアップスタート・ホールディングス(UPST)が、金融業界に変革をもたらす存在として再評価されています。パイパー・サンドラーのアナリスト、パトリック・モーリー氏は同社のカバレッジを開始し、投資判断を「オーバーウェイト」、目標株価を75ドルに設定しました。
これを受け、6月24日の米国市場でアップスタート株は9.4%上昇し、64.62ドルで取引されています(米国東部夏時間15:40現在)
AIによる24時間融資モデルが銀行の業務を効率化
アップスタートは、AIモデルを用いて個人ローン、自動車ローン、その他の融資を自動で審査・承認し、銀行や信用組合と消費者をつなぐ仕組みを提供しています。約90%の案件で即時審査が可能となっており、業務の効率化に貢献しています。
モーリー氏は「同社の融資プロセスは、従来型の銀行融資と比べてはるかに効率的だ。AIモデルは24時間稼働し、人手を大幅に削減できる」と述べています。
金融業界で進むAI導入と先行者優位
信用審査などの分野でAIの導入が進む中、アップスタートはこのトレンドにおける先行者として有利な立場にあります。同社は、従来の融資手法に取って代わる革新的な技術を提供しており、巨大な個人向け融資市場において、プレミアムな評価を受ける価値があるとモーリー氏は分析しています。
上場以降の株価推移と最近の回復
アップスタートは2020年の上場以来、株価の激しい変動を経験してきました。2021年10月には過去最高の終値390ドルを記録しましたが、その後2022年には金利上昇により貸出需要が減少し、業績は悪化しました。2023年および2024年には赤字を計上しています。
しかし、2024年後半以降、業績は回復基調に転じています。過去1年で株価は183%上昇し、CEOのデイブ・ジルアード氏は「再び成長モードに戻った」とコメントしています。2024年9月に連邦準備制度が利下げを開始したことも、今後の追い風になるとしています。
他のフィンテック企業も上昇基調に
アップスタートだけでなく、ソーファイ・テクノロジーズ(SOFI)やレンディングクラブ(LC)などのフィンテック企業も過去1年で大きく上昇しています。市場全体が、AIやデジタル化による金融業の再構築に注目していることがうかがえます。
アナリスト評価は依然として分かれる
一方で、ウォール街の見方は依然として分かれています。ファクトセットによると、2025年5月以降に同社を評価した13人のアナリストのうち、4人が「買い」、7人が「中立」、2人が「売り」としています。
今後、AIモデルの精度向上や金利環境の変化により、アップスタートの成長ポテンシャルがどこまで実現されるかが注目されます。