ヒムズ株30%急落!ノボ・ノルディスクとの提携終了の衝撃

  • 2025年6月24日
  • 2025年6月24日
  • BS余話

2025年6月23日、デンマークの製薬大手ノボ・ノルディスク(NVO)が、米国のオンラインヘルスケア企業ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)との提携を突然打ち切ったことが明らかになりました。この発表を受けて、HIMSの株価は30%以上急落しました。

ノボ・ノルディスクが指摘する「違法な販売」

ノボ・ノルディスクの米国事業担当副社長デイブ・ムーア氏は、ヒムズ&ハーズ・ヘルスが提供していた個別調合のセマグルチド製剤について、「法律に違反している」と述べました。これは、米食品医薬品局(FDA)が5月下旬に出した指針により、医薬品の大量調合が原則禁止されたことに起因しています。

ノボ・ノルディスクによれば、個別調合という名目で実質的に大量販売を続けていたことが、今回の提携解消の決定的な要因であるとしています。同社の発表では、個別化調剤という説明は「偽りの口実(false guise)」だと非難しています。

ヒムズ&ハーズ・ヘルスは「誤解を招く主張」と反論

一方、ヒムズ&ハーズ・ヘルスの最高経営責任者(CEO)アンドリュー・デュダム氏は、ノボ・ノルディスクの発表に即座に反応し、自社のSNSで「ノボが公衆を誤解させている」と強く非難しました。

同社は2024年から一貫して、調合薬の提供は合法的な枠内であり、薬剤が不足していた期間の代替策として機能していたと説明してきました。また、薬剤不足が解消された後も、医師の判断による個別調合は引き続き提供していく方針でした。

争点となる「個別調合」と「大量調合」の境界線

FDAのガイドラインでは、ブランド医薬品が供給不足にある場合に限り、調剤薬局が代替薬を大量に製造・販売することが認められていました。ウェゴビー(Wegovy)の供給不足が解消されたことで、5月22日以降、この例外措置も終了しました。

ヒムズ&ハーズ・ヘルスはこのルール変更後も、「個別処方に基づく少量調剤」という建前でセマグルチドを販売し続けていましたが、ノボ・ノルディスクはこれを「実質的な大量販売」とみなし、契約解除に踏み切ったとみられます。

ノボ・ノルディスクの経営陣交代と戦略転換

今回の決定の背景には、ノボ・ノルディスク内部での戦略変更もあるようです。4月にヒムズ&ハーズ・ヘルスとの提携を発表した直後、同社はCEOのラーシュ・フルーゴール・ヨルゲンセン氏を解任しました。業績不振や株価の下落が原因とされています。

新体制下では、ブランド価値の毀損や法的リスクを回避する方向に方針転換していると見られ、今回の契約解除もその一環と考えられます。

ライバル企業イーライ・リリーの対応

一方、米製薬大手イーライ・リリー(LLY)は、ヒムズ&ハーズ・ヘルスとの提携を早い段階で拒否していました。CEOのデビッド・リックス氏は、調合薬ビジネスに関与する企業とは協力しない方針を明言しており、今回の事態はリリーの戦略の正当性を裏付ける結果となっています。

リックス氏は「コンパウンド業者と提携するか、我々と提携するか、二者択一だ」と発言しており、ヒムズ&ハーズ・ヘルスが「両方の道を取ろうとした」と批判していました。

株価への影響と今後の展望

ヒムズ&ハーズ・ヘルスの株価はこのニュースを受けて大きく下落し、金曜の終値64.22ドルから23日月曜朝には43.89ドルまで急落しました。ノボ・ノルディスクの株価も、週末の医療学会での臨床データ公表を受けて5.4%下落しています。

今回の契約解除により、ヒムズ&ハーズ・ヘルスは調合薬による収益源を再び失う可能性があり、今後の事業展開に不透明感が広がっています。一方のノボ・ノルディスクは、ブランド医薬品の流通統制を強化し、市場の健全化を図る構えです。

まとめ

今回の騒動は、GLP-1関連の減量薬市場が急成長する中で、ブランド戦略と法規制のはざまにある企業同士の利害対立を浮き彫りにしました。消費者にとっては、価格と安全性のバランスをどう取るかが、今後一層重要な選択になりそうです。

*過去記事「ヒムズ&ハーズが決算発表で株価急騰!減量薬ビジネスに新展開、今後の成長性は?

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