2025年6月24日、マスターカード(MA)は、フィサーブ(FI)が発行する新しいステーブルコイン「FIUSD」を自社の決済ネットワークに統合すると発表しました。この動きにより、仮想通貨の主流化がさらに加速しています。
FIUSD対応のクレジットカードを世界中で展開へ
フィサーブとマスターカードは、共同顧客向けにFIUSD対応の決済カードを発行する計画です。これにより、FIUSDを用いた決済が、マスターカードが利用可能な全世界の加盟店で可能になります。
仮想通貨はもともと、既存のクレジットカードネットワークと比較して取引コストを低減させる目的で開発されました。しかし今回の提携は、既存の金融大手が自らのネットワークを仮想通貨と融合させ、新たな決済手段として取り込む試みといえます。
投資家の見方は依然慎重
この提携により、マスターカードの株価は24日の取引開始後に2.7%上昇し、フィサーブの株価も2%上昇しました。ただし、投資家の間ではステーブルコインが従来の決済ネットワークに与える影響について慎重な見方が続いています。
ジェフリーズのアナリスト、トレバー・ウィリアムズ氏は、「ステーブルコインが米国で広く使われる支払い手段になるとは考えていない」としつつも、「ステーブルコインは伝統的な消費者向け決済エコシステムの一部となる可能性がある」とコメントしています。
ビザやペイパルなども巻き込んだ広がるステーブルコインの連携
フィサーブはFIUSDを、他の銀行や金融機関が自社ブランドのステーブルコインとして活用できる「ホワイトラベル型商品」として位置づけています。この取り組みでは、ステーブルコイン発行で知られるサークル・インターネット・グループ(CRCL)、仮想通貨のマーケットプレイスを展開するパクソス・トラスト、さらにペイパル(PYPL)とも連携しています。
ペイパルが発行する「PYUSD」とFIUSDとの相互運用性の構築にも取り組んでおり、国内外での送金や決済の円滑化を図っています。
FIUSDを支えるマスターカードの新技術
マスターカードはFIUSDを世界150万以上の加盟店に対応させる方針です。また、「マルチトークンネットワーク(MTN)」を活用し、銀行向けにプログラマブルでオンチェーンな商取引を可能にする仕組みも導入される予定です。
さらに、「One Credential」プログラムを通じて、消費者がデビット、クレジット、ステーブルコイン残高といった複数の決済手段を柔軟に選べるようになります。
伝統的金融とデジタル資産の融合へ
マスターカードの共同社長チロ・アイカット氏は、「伝統的な金融サービスとデジタル資産の橋渡しとなる強固なエコシステムを構築していく」と述べています。
一方、フィサーブの執行責任者タキス・ゲオルガコポウロス氏は、「この連携により、金融機関と加盟店はより幅広い決済手段を顧客に提供できるようになる」と語っています。
現時点で詳細のすべてが明かされたわけではありませんが、以下の点が今後の焦点となります。
- 法定通貨とFIUSD間のスムーズな資金移動(オン/オフ・ランピング)
- FIUSDによる加盟店の決済処理での効率化とコスト削減
- マスターカードのMTNによる銀行向けのオンチェーン決済支援
株価の推移
2025年に入ってからの株価は、マスターカードが3%上昇、ビザ(V)が8.8%上昇、S&P500指数(SPX)は2.4%の上昇となっています。
仮想通貨とステーブルコインの普及をめぐり、今後も大手金融機関の動きが市場の注目を集めそうです。フィサーブとマスターカードの提携は、その転換点となる可能性があります。