AI関連株への投資で、もはや新興企業に夢を託す必要はないかもしれません。米投資ファームCoatue Managementは、エヌビディア(NVDA)の時価総額が現在の3.5兆ドルから2030年までに5.6兆ドルに成長すると予測しています。これは年率およそ9.6%のリターンに相当します。
派手な数字ではないかもしれませんが、この9%の成長率は、リスク調整後の観点から見て“最も賢いテック投資”となる可能性があります。
エコシステムが築く、圧倒的な競争優位
エヌビディアは、単なる半導体メーカーから、AIスタック全体を支配する“プラットフォーム企業”へと進化しています。その中核にあるのが「CUDA(Compute Unified Device Architecture)」という開発基盤です。
現在、400万人以上の開発者がCUDAを利用しており、他社製品に切り替えるには莫大な工数とコストがかかります。この「乗り換えにくさ」が強力な参入障壁=“モート”を形成しています。
さらに、AIスーパーコンピューターのレンタルサービス「DGX Cloud」や、自動運転向けの「DRIVE」、工場や都市のシミュレーションを可能にする「Omniverse」など、多彩なソリューションを展開。それらはすべてGPUビジネスとの相乗効果を生み、顧客の囲い込みを強化しています。
9%の成長率が“賢い選択”である理由
9%という数字は、過去の爆発的な成長に比べれば控えめに見えるかもしれません。しかし、この成長には「高い確実性」が伴っています。
最新のGPUアーキテクチャ「ブラックウェル」はすでに出荷枠が完売し、2025年後半まで納品が埋まっている状況です。データセンター部門の売上は前年同期比で73%増の391億ドルに達し、粗利率は70%を超える水準を維持。さらに、保有する現金と有価証券の総額は540億ドル以上と、財務基盤も極めて盤石です。
AI市場そのものを拡大するポテンシャル
現時点では、AIは一部の大手企業や先進的な研究機関に限られた技術です。しかし、エヌビディアは中小企業や自治体でも使える“簡単かつ導入しやすい”AIツールを提供し、市場のすそ野を広げようとしています。
たとえば、地方自治体による交通制御、町工場での設備点検、クリニックにおけるAI診断など、あらゆる現場でAIの活用が進めば、市場規模は爆発的に拡大します。
リスクとどう向き合うか
確かに、同社はP/E(株価収益率)34倍と高めの評価を受けており、中国向け売上の減少などの懸念もあります。AMDやマイクロソフト、グーグルなどが独自のAIチップを開発していることも無視できません。
しかし、利益を生み出せていないAIスタートアップに投資することと比べれば、収益性・ブランド力・技術力を兼ね備えたエヌビディアの方が、はるかに“確実性のある投資先”と言えるのではないでしょうか。
未来をすでに変えた企業が、まだ進化を続けている
多くの投資家が「次のエヌビディア」を探し続けていますが、実際には“今のエヌビディア”こそが、今後10年の最良の投資先かもしれません。
圧倒的なスケール、揺るがない競争優位、そして持続的な技術革新。エヌビディアは、AIインフラの中心として、堅実に資産を増やす力を持っています。
未来を切り拓く企業を探すのではなく、「すでに未来を変えた企業」を保有する。これこそが、今のAI投資において最も賢い戦略かもしれません。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA