S&P500は本当に割高?今が買い時かをデータで検証

  • 2025年6月21日
  • 2025年6月21日
  • BS余話

2025年6月現在、S&P500指数(SPX)は6000ポイントをやや下回る水準で推移しています。株価の高騰を受けて、「いまは買い時ではない」と慎重になる投資家も増えていますが、本当にそうでしょうか?長期的な視点で見れば、むしろ割安な可能性もあります。

関税と財政政策がもたらす不安要因

4月2日、トランプ大統領が全輸入品に10%の関税を課すと発表したことは市場に衝撃を与えました。さらに、主要貿易相手国への追加関税も計画されましたが、これらは7月9日まで一時的に停止されています。

同時に、連邦議会下院で可決された税制と歳出法案は、今後の財政赤字拡大を意味し、インフレや金利上昇への懸念も浮上しています。これらの政策リスクが、今後の株式市場の重しとなる可能性は否定できません。

インフレ沈静化と利下げ期待が支える強気相場

とはいえ、足元のインフレ率は米連邦準備制度(FRB)の目標である2%近辺で推移しており、市場では年内の利下げを織り込む動きが加速しています。金利が下がれば企業の資金調達コストも抑えられ、経済成長と企業利益の拡大が見込まれます。

この期待がS&P500を押し上げ、現在の株価は12カ月先の予想1株当たり利益に対して約22倍という高い水準にあります。これは過去3年半で最も高い水準の一つであり、慎重な見方が増えているのも事実です。

控えめな成長想定でも適正価値は上回る可能性

22Vリサーチ創設者のデニス・デブッシャー氏は、S&P500構成企業の利益が今後5年間に年率8%で成長すると仮定して指数の理論価値を試算しました。この8%という数字は、ファクトセットに登録されたアナリストのコンセンサスよりも3ポイント低く、かなり保守的な想定です。

特に、AI関連需要を背景に、ビッグテック企業の利益は今後2年間で年率15%以上の成長が見込まれており、指数全体の利益成長を牽引しています。

長期の成長シナリオと理論株価

さらにデブッシャー氏は、5年目以降の長期成長率を年率4%と想定しています。これは、2024年の米国GDP成長率(2.8%)をやや上回る水準で、ビッグテックの成長力を考慮すれば妥当な見通しです。

配当や自社株買いといった株主還元も利益成長と連動する前提で、将来のキャッシュフローを8%の割引率で現在価値に換算すると、S&P500の理論的価値は6170ポイントになります。これは現在よりも高い水準であり、PER23倍に相当しますが、今後の成長を織り込めば正当な水準といえます。

今のS&P500は「高すぎる」のではなく「まだ安い」のか

悲観的な見方として、企業利益が期待を下回れば株価が下落する可能性は否定できません。しかし、経済が安定し、AIをはじめとするイノベーションによって企業業績が伸び続けるならば、S&P500は現在でも割安と評価できるかもしれません。

テクノロジー以外のセクターにも成長の波が広がれば、今の株価はむしろ妥当であり、投資機会を見逃している可能性もあるのです。今こそ、市場の「割高感」に惑わされず、冷静な視点で本質的価値を見極めることが重要です。

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