自社株買いで株主還元!S&P500で最も株数を削減した企業ランキング

  • 2025年6月19日
  • 2025年6月19日
  • BS余話

2025年6月18日、米投資情報メディアのマーケットウォッチが「過去10年で最も株主に利益をもたらした自社株買い企業ランキング」を発表しました。この記事では、S&P500企業のうち、自社株買いによって希薄化を防ぎ、EPS(1株あたり利益)の向上に寄与した企業が紹介されています。

自社株買いは株主に本当に有利なのか?

企業が行う自社株買いは、単に株数を減らすことでEPSを引き上げ、株価上昇を狙うものです。しかし、経営陣への報酬として新株が発行されることで、その効果が相殺されるケースも少なくありません。したがって、実際に株主還元となっているかどうかは「希薄化後の発行済み株式数(diluted share count)」の変化を見る必要があります。

アップルの事例:自社株買いの成功例

マーケットウォッチによれば、アップル(AAPL)は過去10年間で6977億ドルもの自社株買いを実施し、その結果、希薄化後の株式数を35%削減しました。この削減により、同社のEPSは54%押し上げられたと計算されています。

また、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイも、アップルの自社株買いによる持株比率上昇を評価しています。自社資金を使わずとも、アップルの買い戻しによりバークシャーの保有比率が上がった点を「無料で増資したようなもの」と評しています。

株式数を最も削減したS&P500企業ランキング(上位20社)

以下は、過去10年で自社株買いによって発行済み株式数を最も削減したS&P500企業のリストです(ファクトセット調査、2025年3月末までのデータ):

企業名ティッカー株式数削減率自社株買い総額(10年)トータルリターン(10年)
イーベイEBAY-61%$365億+239%
アメリカン・インターナショナル・グループAIG-57%$482億+74%
HPHPQ-48%$242億+130%
オートゾーンAZO-47%$229億+435%
マッケッソンMCK-47%$230億+235%
オライリー・オートモーティブORLY-44%$215億+489%
マラソン・ペトロリウムMPC-43%$468億+355%
HCAヘルスケアHCA-43%$374億+374%
ロウズLOW-41%$596億+265%
ゼネラル・モーターズGM-41%$306億+71%
メットライフMET-40%$269億+119%
バイオジェンBIIB-38%$268億-65%
ブッキング・ホールディングスBKNG-37%$448億+361%
シティグループC-37%$662億+81%
ウェルズ・ファーゴWFC-37%$1,288億+69%
CSXCSX-36%$266億+223%
オラクルORCL-36%$1,208億+441%
アップルAAPL-35%$6,977億+586%
バンク・オブ・ニューヨーク・メロンBK-35%$261億+168%
アプライド・マテリアルズAMAT-35%$316億+907%

自社株買いは万能ではないが、成功例も多数

上記ランキングから分かる通り、自社株買いは必ずしも株価上昇を保証するものではありません。バイオジェンのように株数を減らしながらも株価が下落している例もあります。一方で、アプライド・マテリアルズのように自社株買いと業績成長が同時に進行した企業では、株主は大きなリターンを得ることができました。

企業の財務戦略としての自社株買いは、その実行タイミングや持続性、そして並行して行われる経営判断次第で、株主の成果は大きく異なります。

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