2025年6月17日、米国の大手半導体企業エヌビディア(NVDA)に対して、バークレイズの半導体担当アナリストであるトム・オマリー氏が目標株価を200ドルに引き上げたことが明らかになりました。これは現在の株価水準から約38%の上昇余地を示唆するもので、時価総額ではおよそ4.9兆ドルに相当します(現在は約3.5兆ドル)。
「ブラックウェルの利用率は健全で、供給網もポジティブ」
オマリー氏は、エヌビディアの次世代AIプラットフォーム「ブラックウェル」の供給網について、独自の調査に基づき「健全な利用率が確認できた」と述べました。2025年6月時点での月間ウェーハ生産量は約3万枚に達しており、1枚あたり15個のチップと想定すると、生産能力は当初予想よりやや下回るものの、利用率の高さが補っていると評価しています。
また、オマリー氏は「第4四半期(10〜12月期)に向けた見通しに対して、より確信を持てる状況になってきた」と語っています。
AIエージェントの普及が追い風に
ブラックウェルは、最小限の人間による指示でタスクを遂行する「AIエージェント」に対応しており、データセンターや企業システムでの採用が進んでいます。オマリー氏は、この流れがエヌビディアの業績を押し上げている一因であるとし、特にコンピュート関連の売上が10月期および翌1月期にかけて「10%台半ばの成長が見込まれる」と予測しています。
中国販売の影響は限定的、旧型チップは計上せず
オマリー氏はまた、米国政府による輸出規制の影響で、中国向けのHopperチップやH20チップの販売が「実質ゼロ」に近づいているとしながらも、これらが今後の売上見通しに与える影響は限定的であると述べています。
ブラックウェル・ウルトラが第3四半期から量産開始へ
次なる展開として、エヌビディアは「ブラックウェル・ウルトラ」チップの本格展開を進めています。オマリー氏によれば、現在四半期内に少量の供給が始まり、2025年第3四半期には量産が本格化する予定とのことです。これにより、チップの販売数量の増加だけでなく、同社の粗利率改善にも貢献すると見られています。
粗利率は後半にかけて改善の見通し
エヌビディアは2025年度第1四半期(2〜4月)において調整後粗利率61%を記録し、前年同期の78.9%からは大幅に低下しました。H20チップの輸出停止に伴う45億ドルの在庫費用を除いた場合でも、粗利率は71.3%と前年割れの状況です。
しかし、オマリー氏は「ブラックウェルおよびウルトラの出荷増により、粗利率は第4四半期以降に回復基調に入る」との見通しを示しています。また、同様の見解を示すジェフリーズのアナリスト陣は、「データセンター向けAIアクセラレーターの支配的地位」により、粗利率が70%台中盤にまで改善すると予測しています。
エヌビディア株にさらなる上昇余地——トム・オマリー氏の強気姿勢
エヌビディアの株価は2025年に入ってから7%以上上昇し、過去3カ月では約21%の伸びを示しています。トム・オマリー氏は、ブラックウェルシリーズの好調な立ち上がりと、次世代チップの準備状況を踏まえ、「当社のカバレッジ銘柄の中で最も上昇余地がある」と指摘しています。
同氏の目標株価200ドルが現実となるかは今後の出荷動向と決算次第ですが、AI分野の成長を象徴する企業として、エヌビディアの動向から目が離せません。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA