人工知能(AI)は「工場」で働いている——そんな表現を、エヌビディア(NVDA)やシュナイダーエレクトリック(ユーロネクスト・パリ上場)は使っています。ここでいう工場とは、ChatGPTやグーグルのGeminiなどが稼働する「データセンター」のことです。
テスラが開発を進めるロボタクシー用のAIコンピュータも、まさにその一例です。こうした“AIファクトリー”では、今後ますます大量の電力が必要になると見込まれています。
データセンター投資、2028年には4,000億ドル超に
バンク・オブ・アメリカ(BofA)証券によると、データセンターへの年間投資額は今後数年間で平均12%のペースで拡大し、2028年には4,000億ドルを超える見通しです。これはサーバー、ネットワーク機器、ストレージなどの基幹設備にかかる金額です。
さらに、電力設備、冷却システム、エンジニアリング費用も含めると、総額は5,000億ドルを超え、年平均成長率は16%に達すると予測されています。
BofAのアナリスト、アンドリュー・オビン氏は「AIの推論処理は、想定以上に電力を消費している」と指摘しています。推論とは、ChatGPTやGrokのような学習済みAIが、質問に答えたりタスクを処理したりする動作を指します。
エヌビディアのGPU進化と急増する電力消費
エヌビディアは毎年GPUを進化させていますが、それに伴って電力消費も急増しています。シュナイダーエレクトリックのデータセンター担当副社長、スティーブ・カリーニ氏によると、H200チップを搭載したラックの消費電力は約70キロワット、次世代の「ブラックウェル」チップでは約132キロワットに達するとのことです。
さらに将来登場予定の「ルービン」チップでは、1ラックあたり240キロワットを消費すると見込まれています。シュナイダーでは、1,000キロワットの供給に対応するラックの開発にも着手しています。
エヌビディアとシュナイダー、欧州のAIインフラ整備に貢献
エヌビディアとシュナイダーエレクトリックは最近、欧州のAIインフラ整備を支援するためのパートナーシップを発表しました。欧州委員会が推進する「InvestAI」構想の一環として、少なくとも13か所のAIファクトリーと最大5か所のAIギガファクトリーの建設を目指す取り組みです。
米国でも同様に、電力需要が急増しています。オビン氏は、2014年〜2024年の10年間における米国の電力需要の伸び率は年平均0.5%だったのに対し、2024年〜2035年の間は年平均2.5%の伸びが見込まれると述べています。
この電力需要に対応するには、800ギガワット相当の新たな発電能力が必要となり、投資額は10〜11年で1.4兆ドル規模に達する見通しです。
GEベルノバ株に注目、電力拡大の波に乗るか
こうした大規模なインフラ投資の恩恵を受ける企業として、オビン氏はGEベルノバ(GEV)を「買い」と評価しています。GEベルノバは発電装置を手がける企業で、目標株価は550ドルとしています。
6月17日の米国市場の終値は488.66ドルで、前日比0.2%上昇しました。過去12か月で約190%の上昇を記録しており、2026年予想利益に基づくPERは約43倍に達しています。
一方、シュナイダーエレクトリックの株価はこの1年間横ばいで推移しており、2026年予想利益ベースではPERは約22倍です。
まとめ:AI成長とともに拡大する電力投資、恩恵を受ける企業に注目
AIの進化に伴い、データセンターの需要は爆発的に増加しており、電力インフラへの投資も急拡大しています。この構造変化の恩恵を受けるのが、エヌビディア、シュナイダーエレクトリック、GEベルノバといった企業です。
今後もAIの普及が進む中、電力やインフラ分野は引き続き注目されるテーマとなり、投資家にとって大きな成長機会となる可能性があります。