エアロ株がIPO価格の3倍に急騰、個人投資家の関心が集中

  • 2025年6月17日
  • 2025年6月17日
  • BS余話

2025年6月13日に上場したドローンメーカー、エアロ・グループ・ホールディングス(AIRO)の株価が、IPO価格の3倍を超える水準まで急騰しています。特に機関投資家の需要が乏しいとされる中で、これほどの上昇は異例の展開となっています。

IPO価格は想定下限を大きく下回る10ドルに設定

エアロの新規株式公開は、想定価格帯である14~16ドルを大きく下回る1株10ドルで実施されました。この価格設定は、当初の需要が想定よりも弱いことを示唆していました。通常、このような低価格での上場は初値にも悪影響を及ぼす傾向がありますが、エアロの株価は初日の終値で24ドルを記録し、IPO価格に対して140%の上昇となりました。

さらに翌営業日である15日には一時32.9%の上昇を見せ、株価は31.90ドルに到達。IPO価格に対して219%の急騰となりました。

個人投資家の投機的な動きが背景に

IPOの価格設定からは機関投資家の関心が薄いと読み取れますが、その反面、個人投資家の強い需要が株価上昇を後押ししたと見られています。ルネッサンス・キャピタルのアナリスト、マシュー・ケネディ氏は「価格レンジを下回って上場した銘柄が初日に140%も上昇するのは非常に珍しく、小型で赤字の企業に賭ける個人投資家の特徴的な動き」と分析しています。

ドローン政策と地政学リスクが追い風に

このような個人投資家の需要を後押しした要因として、トランプ大統領が署名した「米国のドローン支配強化に関する大統領令」の存在が挙げられます。この命令は米国製ドローンの生産拡大と輸出促進を目指すものであり、エアロのようなドローンメーカーには追い風です。

さらに、上場初日はイスラエルがイランの核施設を空爆した報道を受け、防衛関連株が全体的に上昇した日でもありました。中東や東欧の地政学的緊張は、同社製品の需要を高める可能性があると考えられています。

エアロの業績と将来性

エアロは現在赤字企業であり、2025年第1四半期には売上1,180万ドルに対して197万ドルの純損失を計上しました。ただし、前年同期比では売上が13.7%減少しているものの、通期ベースでは売上が前年比101%増の8,690万ドルと大きく成長しています。

このように、収益性には課題が残るものの、急成長する売上や世界的な軍事支出の増加という追い風を背景に、エアロは「実体のあるビジネス」として投資家から一定の評価を受けている状況です。

近年のIPO動向との比較

他の上場企業と比較すると、利益を上げている企業であるチャイム・ファイナンシャル(CHYM)やサークル・インターネット・グループ(CRCL)は、いずれも価格レンジの上限を上回る価格でIPOを実施し、上場初日に株価が急上昇しました。これは機関投資家の支持を受けた結果といえます。

一方、エアロのような赤字企業が価格レンジを下回って上場しながら急騰するケースは非常に稀であり、個人投資家の関心が突出していたことを裏付ける事例となっています。

今後の展望と留意点

今後、エアロが黒字化への道筋を明確に描けるかどうかが、株価の持続的な上昇にとって重要な要素となります。また、地政学リスクや米国政府の政策次第でドローン需要が拡大する可能性もあり、市場の注目が続くことが予想されます。

ただし、短期的なボラティリティには注意が必要です。個人投資家中心の需給構造は、株価が急落するリスクも孕んでいるため、冷静な判断が求められます。

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