アドビ決算でAI効果が鮮明に:通期見通しを上方修正も株価下落

2025年6月12日、米国のソフトウェア大手アドビ(ADBE)は2025年度第2四半期の決算を発表し、アナリスト予想を上回る好調な業績と、年間売上・利益の見通し引き上げを明らかにしました。人工知能(AI)を活用したクリエイティブツールへの需要が業績を押し上げていると説明しています。

予想を上回る第2四半期決算

アドビの第2四半期の調整後1株利益は5.06ドルで、売上は58億7,000万ドルでした。これはアナリスト予想(1株あたり4.97ドル、売上58億ドル)を上回る内容となりました。前年同期の業績は1株あたり4.48ドル、売上53億1,000万ドルであり、1年で大きく成長しています。

CFOのダン・ダーン氏は「今年前半の好調な業績を受けて、2025年度の売上およびEPS予想を引き上げる」とコメントしています。

通期ガイダンスの上方修正

アドビは2025年度通期の1株利益を従来の20.20〜20.50ドルから、20.50〜20.70ドルへと引き上げました。ウォール街の予想平均は20.39ドルであり、これを上回る見通しです。

売上見通しも、従来の233億〜236億ドルから、235億〜236億ドルに修正されています。アナリストの予想平均は234億5,000万ドルであり、堅調な成長を反映した内容となっています。

株価は決算後に下落

決算内容は良好だったものの、発表翌日の13日の市場で株価は6.5%下落し、386.83ドルとなりました(米国東部夏時間10:30現在)。年初来では13%下落しており、同期間に1.7%上昇したS&P500指数を大きく下回っています。

ガイダンスに対する失望感や、生成AIプラットフォーム市場での競争激化が、投資家心理を冷やしている可能性があります。

生成AI市場での競争と戦略

アドビは画像生成AI「Firefly」に加え、2025年2月には動画向けの「Firefly Video Model」を正式にリリースしました。また、3月のAdobe SummitではさらなるAI機能の強化を発表し、5月にはこれらAI機能の追加を反映する形でCreative Cloudの価格を引き上げています。

一方で、オープンAIの「ChatGPT」、キャンバの画像生成ツール、アルファベット(GOOGL)の動画生成AI「Veo 3」など、競合製品も次々に登場しています。

CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏は「ビジネスパーソン、クリエイティブおよびマーケティングプロフェッショナル向けに革新的なソリューションを提供する戦略が成果を上げており、2025年度の売上目標を引き上げた」と語っています。

割安感が出始めた株価評価

アドビの株価は、今後12カ月の予想利益に対して19.1倍で取引されており、過去5年間の平均である31.3倍を大きく下回っています。市場では、AI分野での実績が株価の押し上げ材料になるかどうかが注目されています。

今後の投資判断

AI需要を追い風に業績を伸ばすアドビですが、競争の激化や投資家の期待とのギャップにより、株価には不安定さが残っています。新しいAI機能の収益化が進み、成長戦略が明確になれば、再評価される可能性があると考えられます。

*過去記事「アドビ株が決算発表後に急落!好決算なのになぜ売られたのか?

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