アメリカの原子力スタートアップであるオクロ(OKLO)の株価が2025年に入り急騰しています。年初来の上昇率は142%、過去1年では470%に達し、投資家の関心を集めています。調査会社シーポート・リサーチ・パートナーズのアナリスト、ジェフ・キャンベル氏は、目標株価を71ドルに設定し、さらなる上昇余地を見込んでいます。
シーポートが「中立」から「買い」へ格上げ
キャンベル氏は6月9日付のレポートで、オクロ株の投資判断を「中立」から「買い」へと引き上げました。株価が51.80ドルの水準にあるなかで、71ドルという目標株価は約41%の上昇を示唆しています。その評価の背景には、原子炉そのものだけでなく、燃料の製造・リサイクルに対する同社の独自戦略があります。
原子力業界のボトルネック:燃料問題に挑む
オクロは、2027年末から2028年初めにかけて、アイダホ国立研究所内に初の小型原子炉「Aurora(オーロラ)」を設置する計画です。同社CEOのジェイコブ・デウィット氏は、「我々は燃料を確保できている唯一の企業だ」と語り、燃料問題への対応力を強調しています。
ただし、アイダホ国立研究所から提供される高濃縮ウラン(HEU)は、そのままでは使用できず、専用の製造工程が必要です。オクロは現地に燃料製造施設を設け、将来的にはリサイクル施設も整備する方針です。
米国の核燃料供給事情とオクロの立ち位置
現在、アメリカはロシア国営のテネックス社から高濃縮ウランを輸入していますが、価格競争の影響で国内産業は停滞しています。オクロの原子炉は、より低濃度の「高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)」を使用する設計ですが、商業レベルでのHALEU精製技術はまだ発展途上です。
そのため当面は、HEUをHALEUにブレンドダウンするか、20%未満のウラン235を含む形で加工することが現実的と考えられています。
自社燃料によるコスト管理と収益化戦略
オクロは、自社で燃料を製造・調達できる体制の構築を進めており、これがコストの安定化と長期的な収益向上につながると見られています。キャンベル氏は、この戦略が同社のキャッシュフロー創出力を強化すると評価しています。
シーポートの分析モデルでは、2030年までに投資フェーズを完了し、燃料および原子炉事業から自由なキャッシュフローが生まれると予測。燃料製造やリサイクルを主な収益源とはしていませんが、他企業への燃料供給など、将来的なビジネスチャンスにもつながる可能性があります。
規制との対話と今後のマイルストーン
オクロは2022年、原子力規制委員会(NRC)から統合ライセンス申請を却下されましたが、現在は再申請に向けた準備を進行中です。2025年3月にはNRCとの事前相談を開始しており、2025年内または2026年半ばまでに正式申請を行う見通しです。
今後も注目すべき原子力スタートアップ
オクロは、原子力業界の構造的課題である「燃料問題」に独自のアプローチで挑む、革新的なスタートアップとして注目を集めています。今後の成長には規制対応や技術の進展が鍵となりますが、同社の取り組みは、投資家にとって注視すべき動向であることは間違いありません。