2025年6月9日、アメリカの半導体大手エヌビディア(NVDA)の株価が週明けの取引で上昇しました。背景には、ロンドンで開催中の「ロンドン・テック・ウィーク」で発表された人工知能(AI)戦略や、米中貿易協議に対する期待感があります。
ロンドン・テック・ウィークでの基調講演
エヌビディアの最高経営責任者ジェンスン・フアン氏は、イギリスのキア・スターマー首相とともに、ロンドン・テック・ウィークの冒頭で基調講演を行いました。その中で、イギリスのAIエコシステムへの積極的な投資を表明し、「ここは本当に素晴らしい投資先だ。ここに投資する」と述べました。
このイベントでは、エヌビディアがイギリス国内の企業と連携し、「主権AI産業フォーラム(UK Sovereign AI Industry Forum)」を設立することも発表されました。参加企業には、BAEシステムズ、BT、スタンダードチャータードなどが含まれています。
さらに、クラウドプロバイダーのNscaleとNebiusは、それぞれ10,000個と4,000個のエヌビディア製Blackwell GPUを使って、イギリス国内にAIインフラを展開する計画を明らかにしました。
株価への影響は限定的、注目は米中協議へ
このような発表があったにもかかわらず、エヌビディア株の反応は限定的でした。より大きな影響を与える可能性があるのは、同じくロンドンで行われている米中貿易協議です。
アメリカ側からは財務長官のスコット・ベセント氏、商務長官のハワード・ルトニック氏、通商代表のジェイミソン・グリア氏が出席し、中国側の代表と会談しています。これは、先週5日にトランプ大統領と習近平国家主席が電話会談を行い、ジュネーブでの協議において相互の関税の一部を停止することで合意した流れを受けたものです。
中国が同日に発表した統計によると、アメリカからの輸入は前年同月比で35%も減少しており、これは2020年初頭以来最大の落ち込みとなっています。米中間の関税問題が貿易を大きく阻害していることがうかがえます。
この日の協議が前向きな結果に終われば、エヌビディアを含む米国株全体への投資家のリスク選好が高まり、株価の上昇要因となる可能性があります。
今後の展望
エヌビディア株は、AI関連の成長期待とともに中長期で注目を集めていますが、足元では地政学的リスクや貿易政策の影響も無視できない状況です。今回のロンドンでの発表や米中協議の結果は、今後の株価を左右する重要な要因となりそうです。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA