インテュイティブ・サージカル株が急落、ドイツ銀行がウォール街で初めてとなる「売り」評価

  • 2025年6月10日
  • 2025年6月10日
  • BS余話

2025年6月9日、アメリカの手術支援ロボット大手であるインテュイティブ・サージカル(ISRG)の株価が5%以上下落しました。これは、ウォール街で初めてとなる「売り」評価がドイツ銀行から出されたことが背景にあります。

ドイツ銀行が目標株価を引き下げ、「売り」へ格下げ

ドイツ銀行のアナリストであるイムロン・ザファー氏は、同社株を「ホールド」から「売り」に格下げし、目標株価も515ドルから440ドルへと引き下げました。株価は9日の米国市場で一時10%安まで下落し、最終的には5.55%安の526.15ドルで取引を終えています。

成長を支えてきた独占的地位に変化の兆し

インテュイティブ・サージカルは、2000年にアメリカ食品医薬品局(FDA)から承認を受けたダ・ヴィンチ手術ロボットで市場をリードしてきました。柔らかい組織の外科手術分野で、事実上の独占状態を築いていたのです。

しかしザファー氏は、今後は再製造された低価格な手術用ツールの普及により、競争が激化すると分析しています。特に、プライベート企業であるリストア・ロボティクスがFDAからの承認を取得したことが大きな転機となりました。

再製造ツールの脅威と売上への影響

リストア・ロボティクスのような企業が提供する再製造ツールは、30~50%の割引価格で提供される可能性があります。ドイツ銀行は、これらのツールが今後数四半期でさらに承認され、大手病院から小規模施設へと急速に採用が広がると予測しています。

同社の主力製品であるダ・ヴィンチ・システムは、年間300万件以上の手術に使用されており、5万人以上の外科医が利用しています。機器やアクセサリーは売上の60%以上を占めており、再製造ツールがこの市場の10~15%を奪う可能性があると見込まれています。

他アナリストの反応:買いの好機と見る向きも

一方で、RBCキャピタル・マーケッツのシャグン・シン氏は、ドイツ銀行の分析に対し反論しています。同氏は今回の株価下落を「買いのチャンス」と見ており、再製造ツールの拡大はすでに同社の業績予測に織り込まれていると指摘しています。

さらに、多くの顧客は古い機器ではなく、インテュイティブ・サージカルの次世代システムへの移行を選択するとも述べています。RBCは「買い」評価を継続し、目標株価を605ドルとしています。

過去の株価パフォーマンスと今後の注目点

インテュイティブ・サージカルの株価は過去3年間で150%以上上昇し、2000年の上場以来では26,000%超のリターンを記録しています。これまでメドトロニック(MDT)やジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)などが競合として登場しましたが、同社の牙城は崩れませんでした。

しかし、再製造ツールの台頭により、そのビジネスモデルが転換点を迎える可能性もあります。投資家にとっては、同社の技術革新と競争対応力に注目が集まる局面です。

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