2025年、ウクライナとロシアの戦争は単なる武力衝突にとどまらず、次世代の戦闘技術を生み出す“実験場”となっています。中でも、低コストのドローンは戦場の監視や戦術を根本から変え、歩兵や装備へのリスクを飛躍的に高めています。
ロシア本土を狙った“スパイダーウェブ作戦”、爆撃機を破壊
先週末に実施された「スパイダーウェブ作戦」では、ウクライナが小型の武装ドローンを密かにロシア国内へ送り込み、複数の爆撃機を破壊しました。損害額は数十億ドル規模にのぼると見られています。
調査会社キャピタル・アルファ・パートナーズのアナリスト、バイロン・キャラン氏は「今回の攻撃は、各国に対し戦闘機の格納施設の見直しや、短距離無人機への防衛対策の必要性を強く示している」と指摘しています。こうした対応には、今後巨額の投資が必要になると考えられています。
エアロバイロメント、新たな防衛需要の中心に
こうした新たな防衛ニーズの受け皿として注目されるのが、米国の防衛テクノロジー企業エアロバイロメント(AVAV)です。ウィリアム・ブレアのアナリスト、ルイ・ディパルマ氏は「同社の製品ポートフォリオは、米国および各国の防衛支出の成長分野に的確に対応している」と述べています。
エアロバイロメントは、自爆型ドローン「スイッチブレード」や偵察用ドローン「プーマ」など、前線での作戦に不可欠な製品を開発しています。さらに、同社は対ドローン技術を持つ企業ブルーハロとの合併も進めており、防御領域への展開も強化中です。ブルーハロは、ドローン検知、レーザー攻撃、電波妨害といった高度な対策技術を提供しています。
ディパルマ氏は「新政権ではドローンが明確な優先分野に位置づけられている」と述べ、エアロバイロメント株を「買い」と評価しています。目標株価は未設定ですが、今後の動向が注目されます。
高評価が集まるエアロバイロメント株、株価も堅調
調査会社ファクトセットによると、エアロバイロメント株をカバーしているアナリストのうち88%が「買い」と評価しています。これは、S&P500構成銘柄の平均である55%を大きく上回っています。現在の平均目標株価は約188ドルです。
2025年6月4日の終値は183.48ドルで、前日比1.4%の下落となりましたが、過去1週間では約6%の上昇を記録しており、市場の関心の高さを示しています。
ドローン戦争は“反応の連鎖”へ、技術の軍拡競争が本格化
戦争では、敵の新たな戦術には必ず反応が生まれます。低コストの武装ドローンが登場すれば、それに対応する防御技術が必要となり、さらにそれを上回る性能の新型ドローンが開発されていきます。
この“ドローンの軍拡競争”はすでに始まっており、エアロバイロメントのような企業はその最前線に立っています。今後も世界の防衛戦略と予算配分において、こうした企業への注目は一段と高まると予想されます。