アメリカが先端半導体の対中輸出規制を強化する中、中国がAI関連の投資を継続できるかどうかに注目が集まっています。しかし、アナリストの中には依然として強気な見方を示す声もあり、中国国内のデータセンター需要は今後も拡大し続けるとの予測も出ています。こうした動きは、エヌビディア(NVDA)にとって新たな商機となる可能性があります。
中国クラウド企業の設備投資、米国を上回る
ジェフリーズによると、2025年第1四半期における中国のクラウドサービスプロバイダー(CSP)の設備投資(Capex)成長率は、米国の同業他社を上回ったと報告されています。中国のクラウド企業は、2024年末に米国の規制強化を見越してチップを備蓄していたと見られますが、それを考慮しても、クラウド売上に対する設備投資比率は米国に迫りつつあると指摘されています。
中国のIT大手である百度(BIDU)、アリババグループ(BABA)、テンセント(TCEHY)のいわゆる「BAT」3社による設備投資額は、前年同期比で約2倍に増加。これで6四半期連続で、米国企業の水準を上回る結果となっています。
米中クラウド企業の構造の違いが投資傾向に影響
米国のクラウド大手、アルファベット(GOOGL)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)は、それぞれ検索、Eコマース、ソフトウェアといった非クラウド分野でも大きな売上をあげているため、クラウド事業への投資比率は比較的抑えられています。
一方で、ジェフリーズは中国のクラウド企業について、AIを活用した自社サービス強化の一環として、引き続き積極的な投資を行うと予測しています。
中国のAI設備投資、2030年までに1兆元規模へ
ジェフリーズは、中国のAI向けハードウェア設備投資が2030年までに累計1兆元(約1,390億ドル)に達する可能性があると予測しています。米国の輸出規制により、エヌビディアのH20チップが中国市場から締め出されるという短期的な影響は避けられないものの、データセンター事業者のVNET Groupによれば、少なくとも2026年前半までは十分な在庫を確保しているとのことです。
エヌビディア、規制回避へ新チップを準備中か
エヌビディアは、第2四半期に中国市場で最大80億ドルの売上減を見込んでいますが、業界関係者によると、同社は米国規制を回避できる低性能版の新チップを2025年7月にも投入する計画です。この新製品は、最新のブラックウェル・アーキテクチャを基に設計されているとみられています。
エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏は先月の決算発表で、「中国向けに新製品を開発する具体的な計画はないが、社内で検討は進めている」と述べています。
中国企業、ゲーム用GPUをAIに転用する動きも
さらに、中国のAI企業はゲーミング向けGPUをAI推論に応用する技術開発も進めています。2024年12月に登場したAIスタートアップ「ディープシーク」は、性能の劣るH800チップを活用し、競争力ある大規模言語モデルの構築に成功しました。こうした工夫により、輸出制限を巧みに回避する動きが広がっています。
中国の半導体製造能力も拡大へ
中国国内では、2025年後半から2026年にかけて7ナノメートルチップの生産能力が拡大する見込みです。国産装置への切り替えにより一時的に歩留まりが低下する可能性もありますが、長期的には供給増加につながると期待されています。
エヌビディア、中国市場喪失のリスクと世界での成長余地
フアン氏は、中国のAI市場が今後数年で500億ドル規模に拡大すると予想しており、同市場を失うことは「非常に大きな損失」になると警戒しています。
一方、調査会社Radio Free Mobileの創業者リチャード・ウィンザー氏は、エヌビディアは中国市場を見限り、他地域への注力を強化すべきだと主張。「中国は技術面で米国より数年遅れており、世界的なチップ供給国にはなり得ない」との見解を示しています。
米国市場での成長期待は依然として高い
モルガン・スタンレーは、ブラックウェル・プラットフォームの展開拡大により、エヌビディアは中国での販売制限を受けながらも業績が加速していると評価しています。サーバーラック供給のボトルネックも2025年後半には解消される見通しで、今後の成長に対する期待は高まっています。
エヌビディアは、AIインフラ市場の中心に位置する存在として、今後も高い競争力を維持し、長期的な成長が持続すると見られています。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA