人工知能(AI)関連銘柄といえば、エヌビディア(NVDA)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)といった代表的なハードウェアメーカーが注目されがちです。しかし、インフラ面で着実な成長を見せるもう一つの注目銘柄が存在します。それが、シスコ・システムズ(CSCO)です。
「誰も語らない」ソブリンAIの本命プレイヤー
6月3日、メリウス・リサーチのアナリスト、ベン・ライツェス氏は、シスコ株に対して「買い」評価を継続し、目標株価78ドルを据え置きました。現在の株価は63.3ドル付近と割安感があり、同氏は「AIの波に乗り始めたばかりの企業であり、カバレッジ銘柄の中で最も割安な存在の一つ」と評しています。
ライツェス氏は、シスコを「誰も語らないソブリンAIプレイヤー」と位置づけ、他のAI銘柄とは異なる独自のポジションに注目しています。
サウジアラビア・UAEとのAIインフラ構築契約
シスコは先月、サウジアラビアおよびアラブ首長国連邦(UAE)との間で、自国主導のAIクラウド基盤を構築する契約を発表しました。これは、安全性を重視したクラウドベースのAIインフラを、それぞれの国家において自立的に構築することを目的としたプロジェクトです。
シスコは、自社のネットワーク機器とパートナー企業の力を活かし、これらのインフラをサポートすることで、AI分野への参入を加速させています。
ネットワーク刷新による需要増にも期待
シスコのもう一つの強みは、企業や教育機関などの「キャンパス・ネットワーク」における機器の更新需要です。今後1〜2年の間に、こうしたネットワークの更新サイクルが訪れることから、製品注文が増加する可能性があります。
ソブリンAIへの国際的な関心と相まって、ネットワーク機器の需要拡大は、同社の成長を後押しすると見られています。
第3四半期決算も好調、株価は堅調推移
先月発表されたシスコの第3四半期決算は、市場予想を上回る内容となり、今四半期の売上見通しについても堅調な指針が示されました。
株価は2025年に入り約7%上昇しており、同期間に1%下落しているナスダック総合指数に対して、相対的に良好なパフォーマンスを示しています。
長期投資先としての魅力
シスコ株は現在、2000年初頭に記録した過去最高値から約20%下回った水準にあります。これは裏を返せば、今後の成長を見越した割安な投資機会が残されているとも言える状況です。
AIブームの中で表舞台に立つことの少ないシスコですが、ソブリンAIやネットワークインフラという独自の分野で存在感を増しつつあります。今後の成長ポテンシャルを見据えた中長期投資の選択肢として、再評価する価値のある銘柄です。