トゥルイスト証券のアナリスト、C・パトリック・スコールズ氏は5月30日、エアビーアンドビー(ABNB)の投資判断を「ホールド」から「セル」に格下げしました。これは、投資家がアメリカおよび欧州における夏季のレジャー需要の鈍化を過小評価しているとの判断によるものです。
目標株価も従来の112ドルから106ドルに引き下げられ、これは30日の終値129ドルから約16%の下落余地を意味します。エアビーアンドビーの株価は、年初来では1.8%のマイナスとなっています。同社が組み入れられている「コンシューマー・ディスクリショナリー・セレクト・セクター SPDR ETF(XLY)」も、2025年に入ってから4%下落しています。
宿泊業界全体に広がる予約の鈍化
スコールズ氏が率いるアナリストチームは、数百万件におよぶ米国内のホテル予約データや業界関係者へのヒアリングを通じて、宿泊業界が明確な減速局面に入っていると分析しました。
「消費者および企業の信頼感の揺らぎ、政府関連出張の削減、そして国際的な渡航者数の減少が重なり、予約状況に直接的な影響を及ぼしている」と指摘しています。
他の主要ホテル銘柄にも目標株価を引き下げ
トゥルイスト証券は、エアビーアンドビー以外の宿泊関連銘柄も相次いで目標株価を引き下げました。対象となった企業は以下の通りです。
- ハイアット・ホテルズ(H):140ドル(従来156ドル)
- チョイス・ホテルズ・インターナショナル(CHH):128ドル(従来144ドル)
- ダイアモンドロック・ホスピタリティ(DRH):9ドル(従来10ドル)
- マリオット・インターナショナル(MAR):273ドル(従来300ドル)
特に中価格帯ホテルの方が影響が大きく、「中間層のレジャー支出の伸び悩み」と「政府ビジネスへの依存度の高さ」が要因とされています。
第3四半期の業績見通しも慎重な姿勢
アナリストらは、第3四半期の「利用可能客室あたり収益(RevPAR)」が、現在のウォール街のアナリスト予想を150ベーシスポイント下回る可能性が高いと見ています。
ただし、今回の需要鈍化は、2020年の新型コロナウイルスによる需要崩壊とは異なり、あくまで段階的かつ限定的な減速だとしています。
第2四半期の業績については、企業が前回の決算発表時に示した保守的なガイダンスと一致している動きが見られ、現時点では大幅な修正は必要ないとの見方が強くなっています。
投資家への示唆
今回のレポートは、米国ホテル業界が直面する構造的な課題を浮き彫りにしています。とりわけ短期宿泊やレジャー需要への依存度が高い企業にとっては、今後の業績に対する下振れリスクが高まっていると言えそうです。
エアビーアンドビーを含む宿泊関連銘柄を保有している投資家にとっては、今後の市場動向とともに、ポートフォリオの見直しが必要なタイミングかもしれません。
*過去記事はこちら エアビーアンドビー ABNB