エヌビディア株が急騰、サウジアラビアとのAI半導体大型契約が追い風に

エヌビディア(NVDA)の株価が5営業日で15%超上昇し、年初来の下落分を取り戻しつつあります。特に5月14日には4%超の上昇を記録し、135.34ドルで取引を終えた後、時間外取引でも1ドル高の136.34ドルをつけています。この背景には、米国半導体企業各社とサウジアラビアとの間で結ばれた大型契約が大きく影響しています。

サウジアラビアとのAI半導体供給契約

エヌビディアは、サウジアラビアのAIベンチャー「Humain(ヒュメイン)」に対し、今後5年間で数十万個規模のAIチップを供給すると発表しました。第一弾として、最先端のGrace Blackwell(グレース・ブラックウェル)AIスーパーコンピュータをヒュメインに納入し、18,000個のGB300チップを搭載する計画です。

ヒュメインは、サウジアラビアの公共投資基金(PIF)が所有する新興AI企業で、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が会長を務めています。発表はトランプ大統領の訪問前日に行われ、米国とサウジアラビアの経済関係強化を象徴する動きとなりました。

70億ドル規模の契約、株価目標も引き上げ

バンク・オブ・アメリカは、この契約の総額を70億ドルと試算し、エヌビディアの目標株価を150ドルから160ドルに引き上げました。これにより市場の期待も高まり、株価の急騰につながっています。

また、ブルームバーグの報道によれば、米国政府はアラブ首長国連邦(UAE)に対して、エヌビディアのAIチップ「100万個以上」を販売する契約を結ぶ方向で調整していることも伝えられました。

米国半導体企業各社もサウジアラビアと契約締結

エヌビディアだけでなく、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)やクアルコム(QCOM)もヒュメインとの契約を発表しています。特にAMDは100億ドル規模の契約を結び、今後数年にわたりAIデータセンター向けにチップを供給する計画です。

バーンスタインのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏は、これらの動きを「AIハードウェア需要の強さを示す良い兆候」と指摘しています。

米中摩擦の影響とサウジアラビア市場の重要性

投資家の間では、米国のビッグテック企業がAIインフラへの巨額投資をどこまで続けられるかに注目が集まっています。そうした中で、サウジアラビアのような新たな巨大顧客の登場は、エヌビディアにとって大きな追い風となります。

一方で、トランプ政権は中国向けのAIチップ輸出を禁止する一方で、中東地域への輸出制限を緩和する姿勢を示しています。5月14日、米国商務省はバイデン前政権が制定した「AI拡散規制」の撤回手続きを開始し、サウジアラビアやUAE向けの輸出がしやすくなる見通しです。

スーパーマイクロもサウジアラビアと大型契約

エヌビディアのAIチップを用いたサーバーを手掛けるスーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)も、サウジアラビアのデータボルト社との間で200億ドル規模の契約を発表しました。同社株もエヌビディアに連動する形で大きく上昇し、14日には15.7%高を記録しました。

中国との競争環境とエヌビディアへの追い風

中国のファーウェイが開発するAscend(アセンド)チップが、エヌビディアの前世代製品と競合すると報じられる中、米国政府はファーウェイ製品の国際的な使用も輸出規制違反にあたるとの方針を打ち出しました。

バーンスタインのラスゴン氏は「ファーウェイのチップは米国製ではなく、米国技術を使わずに製造されていると言われているが、米国の解釈によっては販売が難しくなる」と指摘し、これは結果的にエヌビディアなど米国企業に有利に働くと分析しています。

以上の動きから、エヌビディアは中東市場を新たな成長ドライバーとしつつ、米中対立の影響を和らげるポジションを確立しつつあります。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

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