米国時間5月13日、マイクロソフト(MSFT)は約6,000人の人員削減を発表しました。その中でも本社が位置するワシントン州では、約2,000人が対象となり、そのうち40%以上がソフトウェアエンジニアでした。これは、同社の製品開発を担う部門が最も大きな影響を受けたことを示しています。
この動きは、生成AIの普及が進む中で、ソフトウェア開発自体が自動化されつつある現状を反映しています。マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は、2025年4月の発言で「一部のプロジェクトでは、AIがコードの最大30%を執筆している」と述べています。
AI投資に伴うコスト管理と予算の再配分
マイクロソフトはAI分野への莫大な投資を進める一方で、データセンター建設にかかる膨大なコストを抑制する必要性もあります。そのため、企業全体でコストの見直しと予算の優先順位付けが行われています。今回のレイオフはその一環とされ、人件費の最適化が急務となっています。
ソフトウェア開発現場へのAIの浸透と人員削減の現実
AIがコードの自動生成を担うことで、これまで手作業で行われていたソフトウェア開発の一部が効率化されています。結果として、ソフトウェアエンジニアやプロダクトマネージャー、テクニカルプログラムマネージャーといった開発系職種がレイオフの主な対象となりました。
ワシントン州での削減対象者の約30%がこれらのプロジェクト運営系職種に該当し、管理職層も一定数削減されています。しかし、マイクロソフトは「管理層の階層を削減する」と発表したものの、管理職比率は2023年末時点と大きく変わっていないことが指摘されています。
顧客対応部門への影響は限定的
今回のレイオフでは、営業やマーケティングといった顧客対応部門への影響は比較的少なく、エンジニアやプロジェクト管理系職種に集中しました。これにより、企業としての販売活動や市場対応力を維持しつつ、開発コストを抑えるというバランスを取る方針が読み取れます。
他社もAIにフォーカスしつつ人員再編を進行
同様の動きは他の大手テクノロジー企業にも広がっています。セールスフォース(CRM)は、AI関連の営業職を増員する一方で、2025年にはエンジニアの採用を抑制すると発表しました。ワークデイ(WDAY)も2月に人員削減を行い、AI戦略に関連する分野での採用を続ける方針を示しています。
まとめ:AI時代の企業構造改革が加速
マイクロソフトのレイオフは、AI技術の進化が企業の人員配置や開発体制に直接的な影響を与えていることを象徴しています。今後、ソフトウェア開発現場におけるAIの役割はさらに拡大し、企業は柔軟かつ戦略的な人材配置を進めていくことが予想されます。
こうした流れは、エヌビディア(NVDA)などのAI関連企業への投資機会としても注目されており、投資家にとっても重要なトピックとなっています。
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