米国と中国の貿易協議が進展し、中国からの輸入品に対する追加関税が90日間停止されることとなりました。この合意を受け、5月12日の米国市場ではリスク資産への資金流入が加速しました。
ダウ工業株30種平均(DJIA)は一時前日比1,050ドル(2.5%)高となり、調整局面からの脱却が目前に迫っています。S&P500種株価指数(SPX)は2.9%上昇し、200日移動平均線(約5,750ポイント)を上回って取引されました。ナスダック総合指数(IXIC)も4%の大幅高となり、ハイテク株が市場をけん引しました。
財務長官「米中はデカップリングを望まない」
スコット・ベッセント財務長官は、米中両国ともに経済のデカップリング(分断)を望んでおらず、貿易のバランスに対する共通の関心があると述べました。さらに、今後も対話を継続するための枠組みが整備されたことが、株式市場の上昇と債券価格の下落を誘発しました。
投資家心理の改善とリスク資産への回帰
ナットアライアンス証券のアンドリュー・ブレンナー氏は、米国のリスク資産から一時的に撤退していた世界の投資家が、急速に買い戻しを進めている状況を指摘しました。同氏は「この上昇がどこまで続くのか、信頼できるものなのかが問われている」としつつ、リスクパリティ戦略を採る投資家が買いを強いられ、CTA(商品投資顧問)の空売りポジションが解消され、債券市場の警戒感が強まっていることを強調しました。
今後のカギはインフレ指標と小売売上高
イートレード・フロム・モルガン・スタンレーのクリス・ラーキン氏は、今週発表されるインフレ率や小売売上高、企業決算が、株式市場の勢いを維持するうえで重要になると分析しています。「関税がサプライチェーンに与えた影響や経済成長の鈍化については依然として議論が続いている」と述べ、スタグフレーション懸念を煽るような経済指標が出れば、現在の強気相場が揺らぐ可能性があると警鐘を鳴らしました。ただし、先週ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が指摘したように、米国経済は依然として堅調であるとの見方も根強く残っています。
まとめ:市場は次なる材料を待つ展開に
今回の米中貿易協議の進展は、短期的に市場心理を大きく改善させました。しかし、今後発表される経済指標や企業決算が、この上昇トレンドを支えるかどうかが注目されます。リスク資産への資金流入が続くかどうかは、経済の実態を反映するデータ次第となりそうです。