アップル(AAPL)が5月1日に発表した2025年度第2四半期決算は、中国市場における売上減少や関税の影響が色濃く表れる内容となりました。この発表を受け、1日のアフターマーケットでアップル株は4%近く下落しています。世界で最も時価総額の高い企業のひとつであるアップルが直面している課題について、詳細に解説します。
中国市場での売上が予想未達に
アップルの第2四半期における中国での売上は160億ドルで、前年同期比で2.3%減少しました。これはアナリスト予想の168億3000万ドルを下回る結果となりました。かつては成長市場とされた中国ですが、現在はファーウェイ、シャオミ、オッポといった国内ブランドの躍進により、アップルの競争力が低下しています。
さらに、中国政府は一部の職場で外国製テクノロジーの使用を禁止しており、アップルの中国依存型生産体制は、アメリカによる新たな関税の対象にもなり得るリスクを抱えています。
関税によるコスト上昇と業績への影響
アップルは今期、関税により9億ドルのコスト増加を見込んでいます。この影響により、同社は今期の売上成長率を「1桁台前半から中盤」と見積もっており、アナリスト予想の平均5%とほぼ一致する形です。
また、電子機器への新たな関税が導入される見込みで、サプライチェーンに大きな影響を与える可能性もあります。このため、アップルは中国以外、特にインドでの生産拡大を図っています。
iPhoneの販売は堅調だが成長鈍化
iPhoneの売上は468億ドルで、市場予想の459億ドルを上回りました。ただし、前年同期の460億ドルからの増加率は2%未満にとどまり、2年前の513億ドルと比較すると減少しています。
第2四半期にはエントリーモデルとして新たに「iPhone 16e」が登場しましたが、価格は599ドルと他社の競合製品よりも高く、価格面で消費者の購買意欲を削ぐ要因となった可能性があります。
AI分野では他社に遅れ
アップルはAI分野での遅れも明らかになっています。中国市場では同社のAIプラットフォームが未展開であり、ファーウェイなどの競合が折りたたみスマートフォンなど先進的な製品を投入する中、アップル製品は「時代遅れ」との評価を受けつつあります。
AIへの対応の遅れを挽回するため、アップルは経営陣の再編成も進めており、今後の動向が注目されます。
サービス部門とその他製品の業績
App StoreやApple TV+などを含むサービス部門は前年同期比で12%増の267億ドルとなり、予想通りの成長を示しました。ただし、米連邦裁判所がApp Storeにおける外部決済手段の導入を命じたことで、収益構造に変化が生じる可能性があります。
一方で、Macは79億5000万ドル、iPadは64億ドルの売上を記録し、それぞれ予想を上回る結果となりました。しかし、ウェアラブルやホーム製品の売上は75億2000万ドルと、市場予想の80億5000万ドルに届きませんでした。
自社株買いと配当の増額を発表
アップルは今回の決算発表と同時に、1000億ドル規模の自社株買いプログラムの増額と、四半期配当を4%引き上げて1株あたり26セントとする方針を明らかにしました。これにより、株主への利益還元を強化する姿勢を示しています。
今後の注目点:関税と製品刷新
関税問題は依然として不確実性が高く、アップルのサプライチェーンや価格戦略に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、消費者の需要喚起に向けて、今年後半には「より薄型の新型iPhone」など、より大きな製品刷新を予定していると伝えられています。
米中関係の緊張、AI競争、規制強化という三重苦の中で、アップルがどのような戦略を打ち出すのかが、今後の株価と企業価値の行方を左右する大きな要因となりそうです。
*過去記事はこちら アップル AAPL