景気後退でも強い!ウォルマートとアマゾンの鉄壁ビジネスモデル

2025年現在、小売業界の勢力図は10年前とは大きく様変わりしています。2015年当時は、アマゾン(AMZN)が業界全体を支配すると考えられ、伝統的な小売企業の株価が大きく下落しました。ウォルマート(WMT)も例外ではなく、インターネットの波に乗り遅れるとの見方が広がっていました。

ウォルマートの巻き返しとアマゾンの戦略転換

アマゾンは実店舗の重要性を認識し、積極的に店舗展開を進めてきました。一方で、ウォルマートはテクノロジーへの積極投資によりオンライン販売を強化しています。また、サードパーティのマーケットプレイス拡充や広告事業の成長にも注力しています。

ウォルマートの主力商品は食品や日用品といった生活必需品であり、ターゲットとは異なるディフェンシブなビジネスモデルが特徴です。この構造と成長戦略により、2025年4月時点ではアマゾンやS&P500を上回る株価パフォーマンスを記録しています。

両社に対するアナリストの評価

バーンスタインのアナリスト、ジーハン・マー氏は、ウォルマートとアマゾンの両社を構造的なeコマースの勝者と評価しています。アマゾンは引き続き日用品以外のカテゴリでリードし、利益率の向上にも注力しています。

一方、ウォルマートはネットスーパーにおいて主導的な立場を築き、自動化や新たな収益源の確立により、eコマースの収益性を高めています。現在、ウォルマートはeコマース成長の初期段階にあり、今後も二桁成長を維持できると見込まれています。

株価と収益性に対する評価

現在のウォルマートの株価収益率(PER)は約35倍と高水準にありますが、EC事業による利益の改善を考慮すれば、実質的には28倍前後と試算されます。これは投資家にとって魅力的なバリュエーションと考えられています。

景気後退への耐性

景気後退のリスクが高まる中、ウォルマートとアマゾンの両社は強い耐性を持っています。ウォルマートは、食品や日用品といった需要が安定している商品の販売が中心であり、実店舗とオンラインの両方において高所得層の節約志向にも対応できる体制が整っています。

アマゾンは、プライム会員向けの安価かつ迅速な配送サービスに対する信頼が厚く、景気後退局面でも競争力を維持できる体制を構築しています。

長期的な成長軌道

2015年以降、ウォルマートの株価はS&P500を上回る伸びを示し、3倍以上に成長しています。ただし、アマゾンの約725%という圧倒的な上昇率にはまだ及んでいません。それでも、ウォルマートはEC事業の拡大、会員制サービス「ウォルマート+」、サムズクラブの強化、海外の不採算事業からの撤退など、さまざまな改革を進めており、企業として大きく進化しています。

今後の展望

今後も米中貿易摩擦などを背景に消費者心理や経済環境には不透明さが残りますが、食品や日用品といった日常生活に必要な商品の需要は継続します。そのため、多くの消費者がウォルマートやアマゾンを選び続ける構図に変化は見られません。

これからの10年間も、小売業界における両社の競争は注目の的となり続けそうです。

*過去記事「アマゾンとウォルマート、インド市場拡大で関税リスクに対抗

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