アマゾン(AMZN)とウォルマート(WMT)は、トランプ大統領による関税政策の影響を受けつつも、新たな成長機会を模索しています。特に注目されているのが、インド市場へのアクセス拡大に関する米印間の交渉です。
インド市場での存在感と課題
アマゾンとウォルマートは既にインドで大規模なビジネスを展開しています。ウォルマートは2018年、インドの大手EC企業フリップカートを160億ドルで買収し、過去最大の買収案件となりました。アマゾンも同国に数十億ドルを投資しています。
しかし、インドの規制により、外国企業は自社の在庫を直接消費者に配送することが禁じられています。このため、両社はインドでは主に第三者販売業者向けのマーケットプレイスとして機能しています。
米印間で交渉進展、関税回避と市場開放を目指す
トランプ政権は、こうした制限の緩和を求め、インド政府との交渉を進めています。報道によると、米国とインドは広範な貿易交渉の枠組みで合意に至っており、追加関税を一時停止する90日間の猶予期間が設けられました。
ジャミーソン・グリア米通商代表は、「インドとの貿易関係には深刻な非対称性がある。今回の協議は、米国企業に新たな市場を開放し、不公正な慣行に対応することで、米国の労働者を守るためのものだ」と述べています。
関税による株価への影響と投資家の評価
インドのオンライン小売市場は2024年時点で約600億ドルの規模があり、世界第2位のオンライン消費者数を抱える巨大市場です。この市場への参入障壁が下がれば、アマゾンやウォルマートにとっては大きな成長要因となります。
アマゾンの株価は4月22日午前の取引で3.2%上昇し172.67ドルとなりましたが、年初来では21%下落しています。これは中国に対する関税が同社の小売・広告事業に悪影響を及ぼすとの懸念が背景にあります。こうした懸念から、アマゾン株は21日にレイモンド・ジェームズによって格下げされました。
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一方、ウォルマートは2025年に入ってから4%以上上昇しており、94.62ドルをつけています。2月には100ドルを超えていましたが、関税の発表後に若干下落しました。とはいえ、アナリストの間では不況下でも安定したディフェンシブ銘柄として評価されています。
米中貿易戦争下で注目される新たな成長ドライバー
米中間の貿易戦争が激化する中で、インド市場はアメリカ企業にとって新たな成長の鍵となる可能性があります。とくにアマゾンとウォルマートのような巨大小売企業にとっては、規制緩和が業績に大きな追い風となりそうです。
今後の米印間の交渉の行方が、両社の株価や事業戦略にどのような影響を与えるか、投資家は引き続き注目する必要があります。