アマゾン(AMZN)は、米国の対中関税強化により小売事業と広告事業の両面で逆風にさらされています。レイモンド・ジェームズのアナリスト、ジョシュ・ベック氏はアマゾン株の格付けを「ストロング・バイ」から「アウトパフォーム」に引き下げ、目標株価も275ドルから195ドルへと大幅に修正しました。
この発表を受けて、アマゾンの株価は4月21日の米国市場の正午過ぎの時点で3.4%下落し、166.76ドルで取引されています。
対中関税強化による影響
米国政府は中国からの輸入品に対して145%の関税を課す新たな政策を導入しました。さらに、中国が他国を経由して米国市場に商品を供給するのを防ぐため、70か国以上に圧力をかける計画も進めています。
ベック氏の分析によれば、アマゾンの一次販売(自社販売)商品の約30%が中国から調達されています。これには、電子機器、おもちゃ、家具、衣料品、自動車部品などが含まれます。この関税強化によって、一次販売事業の粗利益率が約10%低下し、全体の利益率にも2%程度の悪影響を及ぼすと試算されています。
広告事業への影響
2024年、中国を拠点とする広告主はアマゾンの広告事業に約80億ドルを投じており、これは同社の全広告収入の約14%に相当します。これはメタ・プラットフォームズ(META)の11%、グーグルを運営するアルファベット(GOOGL)の6%と比べても高い割合です。この比率の高さは、関税強化やその他の制限により、広告収入の減少リスクが現実味を帯びていることを示唆しています。
サプライチェーンの再構築に向けたコスト増
ベック氏は、アマゾンが中国以外の供給網を構築するために数十億ドル規模の投資が必要になる可能性を指摘しています。これに伴い、直接的なコストだけでなく、取引先企業が新たな供給ルートを開拓するために追加費用を価格に上乗せすることも想定されます。
このような複合的な要因により、アマゾンの利益構造には今後さらなる圧力がかかると見られています。アマゾンはAIや長期的な成長分野に引き続き注力しているものの、目先の収益性への懸念が格付け変更の背景にあると考えられます。
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