糖尿病および減量治療薬分野のパイオニアであるノボ・ノルディスク(NVO)の株価が急落しました。イーライ・リリー(LLY)が開発中の経口薬が、注射薬であるオゼンピックと同等の減量効果を示したことが背景にあります。
この結果を受けて、グッゲンハイムのアナリストであるシーマス・フェルナンデス氏とBMOキャピタル・マーケッツのエヴァン・デビッド・シーガーマン氏は、ノボ・ノルディスクの株式評価を「買い」から「ホールド」へと引き下げました。
イーライ・リリーの新薬が8%の減量効果を示し市場の期待を上回る
イーライ・リリーが開発した経口薬「オルフォグリプロン」は、40週間で最大8%の体重減少を実現し、糖尿病の指標であるA1C値も有意に改善しました。副作用は深刻ではなく、安全性にも期待が高まっています。
このニュースを受けて、ノボ・ノルディスクの株価は週間で13%下落し、58ドルにまで落ち込みました。
ノボ・ノルディスクの先行優位が揺らぐ
ノボ・ノルディスクはGLP-1受容体作動薬の先駆者として、糖尿病治療薬のオゼンピック、肥満治療薬のウェゴビーを市場に投入してきました。一方、イーライ・リリーはマンジャロ(糖尿病)とゼップバウンド(肥満)で後を追ってきましたが、現在ではアメリカ市場での処方データに基づき、シェアを拡大しています。
BMOのシーガーマン氏は「亀がウサギに追いついたのかもしれない」とし、イーライ・リリーが商業面と臨床面で大きな進展を遂げ、ノボ・ノルディスクの先行優位を追い越したと分析しています。
売上減とコスト増が懸念材料に
フェルナンデス氏は、ノボ・ノルディスクが5月7日に発表予定の2025年1〜3月期決算において、ウェゴビーの売上が予想を下回る可能性を指摘しました。また、オゼンピックの売上予測を下方修正し、目標株価も20%引き下げて98ドルに変更しました。
フェルナンデス氏はまた、ノボ・ノルディスクの営業費用についても懸念しており、製造コストの高い高分子医薬品が、製造が容易で低分子の錠剤であイーライ・リリーのオルフォグリプロンとの競争に直面した場合のことを懸念しています。
薬局にとっても注射薬は利益が出にくく、イーライ・リリーの経口薬を推奨する動きが強まる可能性があるとも同氏は指摘します。
R&Dや販売促進費の増加が避けられない状況に
フェルナンデス氏は、今後ノボ・ノルディスクが競争力を維持するためには、研究開発費や販売・一般管理費を増加させる必要があると述べています。GLP-1市場は競争が激化しており、今週ファイザーが開発中の経口薬を断念した一方で、アムジェン(AMGN)やバイキング・セラピューティクス(VKTX)といった企業は差別化された製品を開発中です。
フェルナンデス氏は、ノボ・ノルディスクが価格面でもリスクを抱え、今後は強力ながらも挑戦の多いブランドを支えるために、積極的な営業活動が不可欠と指摘しました。
将来の希望はアルツハイマー治療効果に期待
今後ノボ・ノルディスクは、GLP-1薬がアルツハイマー病予防に有効かを検証する初の試験である「evoke」と「evoke+」の結果に注目が集まります。一方で、イーライ・リリーもオルフォグリプロンに関する複数のフェーズ3試験を進行中で、競争はさらに激化する見通しです。
BMOのシーガーマン氏は目標株価を64ドルに引き下げ、フェルナンデス氏は目標株価そのものを撤回しました。ノボ・ノルディスクは、新たな挑戦の中で成長戦略の見直しが求められています。