ASMLホールディング、売上ガイダンスが市場予想に届かず株価下落

  • 2025年4月16日
  • 2025年4月16日
  • BS余話

オランダの半導体製造装置メーカーであるASMLホールディング(ASML)の株価が下落しています。4月16日に発表した最新の四半期決算において売上高ガイダンスが市場予想を下回ったこと、さらに関税の影響による市場の不透明感が高まっていることが原因です。

ASMLは最先端の半導体製造装置、特にEUVリソグラフィー装置の分野で事実上の独占的地位を築いており、エヌビディア(NVDA)などが牽引する人工知能(AI)ブームの恩恵を受けてきました。しかし、同社の米国預託証券(ADR)は過去12か月で約3割下落しています。

第1四半期決算は増収増益も市場予想には届かず

ASMLの2025年第1四半期の売上高は77億4,000万ユーロ(約88億1,000万ドル)となり、前年同期の52億9,000万ユーロから増加しました。ただし、ファクトセットによるアナリスト予想の77億7,000万ユーロにはわずかに届きませんでした。

純利益は12億2,000万ユーロから23億6,000万ユーロへと大幅に増加し、市場予想を上回る結果となりました。

次四半期ガイダンスが市場予想を下回る

ASMLは次の四半期について、売上高を72億~77億ユーロ、粗利益率を50%~53%と見込んでいます。この範囲はアナリスト予想の78億ユーロを下回っており、特に粗利益率の変動幅が大きいことが市場の懸念材料となっています。

この背景には、最近発表された関税政策による不確実性が影響しています。同社のCEOであるクリストフ・フーケ氏は、「顧客との会話からは2025年および2026年が成長年になるとの見通しが支持されているが、関税発表によりマクロ経済環境の不確実性が高まっており、当面は状況が流動的なままになると予想される」と述べています。

関税政策と半導体業界の地政学的リスク

ドナルド・トランプ大統領は、全ての国からの輸入品に最低10%の関税を課す包括的な政策を発表しました。ただし、中国を除くすべての貿易相手国に対しては、いわゆる「相互関税」に90日間の猶予期間を設けるとしています。

これにより、半導体業界における米中間の技術デカップリングがさらに進行する可能性があり、ASMLの事業環境にも影響を与えています。

注文減と特定顧客への依存度の増加

アナリストは、サムスン電子やインテル(INTC)による設備投資の停滞がASMLの受注状況に影響を与えていると指摘しています。その結果、TSMC(TSM)への依存度が高まっている状況です。

2025年第1四半期の受注額は39億4,000万ユーロとなり、2024年第4四半期の70億9,000万ユーロから大きく減少しました。

ASMLは昨年、2025年の年間売上見通しを従来の予測よりも大幅に引き下げ、300億~350億ユーロの範囲としました。今回の決算発表でもこの年間見通しは据え置かれました。

*過去記事「米国みずほ証券がASMLを格下げ!注目すべきリスクとチャンスを整理

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