半導体大手のエヌビディア(NVDA)は、人工知能(AI)スーパーコンピューターの製造を米国で開始すると発表しました。この動きは、ドナルド・トランプ大統領に対する明確なアピールとも捉えられる内容となっています。
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)はプレスリリースの中で、「世界のAIインフラのエンジンが、初めて米国で構築されようとしている」と語りました。
現在のところ、米国政府は中国に対する報復関税から半導体やテクノロジー製品を除外していますが、近くテクノロジー分野への関税措置を発表する方針です。今回のエヌビディアの発表は、米国内での製造体制を強化することで、将来的な関税適用において有利な立場を得る狙いがあると見られています。
4年間で最大5000億ドル規模のAIインフラを米国に投資
エヌビディアは、今後4年間で米国内において最大5,000億ドル相当のAIインフラを生産するとしています。これは複数の企業との連携によるもので、同社が参画する米国インフラプロジェクト「スターゲート」にも関連しています。
フアンCEOは、「米国での製造強化により、急増するAIチップおよびスーパーコンピューターへの需要に対応しやすくなる。加えて、サプライチェーンの強化やレジリエンスの向上にもつながる」と述べています。
AIスーパーコンピューターは、エヌビディアによれば「人工知能処理を唯一の目的とした新たなデータセンター、いわば“AIファクトリー”の中核を成すもの」です。こうした施設は、今後のAI産業を支える基盤インフラとなると同社は位置付けています。
米国内投資の流れに乗るアップルとエヌビディア
アナリストの間でも今回の動きに注目が集まっています。メリウス・リサーチのベン・ライツェス氏は、以前からエヌビディアがアップル(AAPL)のように、より明確な国内半導体投資を迫られる可能性があると指摘していました。
アップルも2月に、今後4年間で5,000億ドルを米国内に投資すると発表しており、テキサス州にAIソフトウェアを支える新施設を設け、これまで海外で行っていたAIサーバーの組み立ても国内で開始するとしています。
こうした米国企業による国内回帰の動きは、米政府の政策対応や地政学的リスクへの備えとして注目されています。
AI関連事業を牽引するエヌビディアの米国内投資の本格化は、同社の供給体制をより強固にするとともに、米国のAI産業全体にも好影響をもたらす可能性があります。今後の動向から目が離せません。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA