JPモルガン・チェースの第1四半期決算が好調、経済の「大きな混乱」に備える姿勢を強調

  • 2025年4月12日
  • 2025年4月12日
  • BS余話

アメリカ最大手銀行であるJPモルガン・チェース(JPM)は、4月11日に発表した2025年の第1四半期決算で、引き続き経済の不透明感が強まる中でも安定したパフォーマンスを見せました。ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、準備されたコメントの中で「地政学的リスクを含む経済は依然として大きな混乱に直面している」と述べました。

経済に対する懸念材料として、インフレの粘着性、財政赤字の拡大、資産価格の高さ、そして市場のボラティリティが挙げられています。反面、減税や規制緩和といった政策がポジティブ要因として働く可能性も示唆されています。

潤沢な資本と流動性の維持を継続

JPモルガン・チェースは、経済環境の不確実性に対応するため、14億ドルを新たに貸倒引当金として計上し、合計で33億ドルの引当金を設定しました。これは前年同期の18億8,000万ドルから大幅に増加しています。さらに、9億7,300万ドルをリザーブの積み増しに充てました。

同社は、失業率が5.8%まで上昇する可能性に備えて内部シナリオを調整しました。3月の米国政府の発表では失業率は4.2%とされています。

純利益は予想を上回り、株価も上昇

純利益は前年同期の134億2,000万ドル(1株当たり4.44ドル)から146億4,000万ドル(1株当たり5.07ドル)に増加し、ファクトセットの予想である1株当たり4.63ドルを大きく上回りました。これを受けて株価は3.5%上昇しました。

売上高は453億1,000万ドルと、前年同期の419億3,000万ドルを上回り、市場予想の439億9,000万ドルも超えました。

2025年の純金利収入見通しを上方修正

JPモルガン・チェースは、2025年の純金利収入(市場部門を除く)について900億ドルという従来見通しを維持した一方、市場部門を含めた見通しを940億ドルから945億ドルに引き上げました。

同社のチーフファイナンシャルオフィサーであるジェレミー・バーナム氏は、多くの業種で企業顧客が「様子見」の姿勢を取っていると述べ、サプライチェーンへの注視が続いていると説明しました。

クレジットカード事業が焦げ付きの主因に

純貸倒引当金は23億ドルと、前年の3億7,600万ドルから大幅に増加しました。これは主にクレジットカード部門の影響によるものです。とはいえ、同社の信用状況は依然として堅調に保たれており、将来的な失業率の上昇を考慮して追加のリザーブ設定も視野に入れています。

市場部門が堅調、株式取引収益で過去最高

2025年第1四半期は、エヌビディア(NVDA)などの米国AI関連銘柄を巡る不透明感が市場を揺さぶる中、JPモルガン・チェースの市場取引部門は21%増の97億ドルと大幅な増収を記録しました。株式取引収益は過去最高を更新しました。

ダイモンCEOはこの結果を「非常に強力」と評価し、米国債市場に対する懸念があっても米国は依然として「安全な避難先」であると述べました。

投資家や専門家からの評価も上々

ノースウェスタン・ミューチュアルの株式担当ポートフォリオマネージャーであるマット・スタッキー氏は、「JPモルガンはあらゆる環境に対応する能力があることを改めて示した」と評価しました。また、ガベリ・ファイナンシャル・サービス・オポチュニティーズETFのポートフォリオマネージャーであるマック・サイクス氏は、「各部門で堅実な実行力が見られた」とコメントしています。

2025年に入り、JPモルガン・チェースの株価は年初から5.3%下落していますが、S&P500が10.4%、ダウ平均が6.9%下落していることを考えると、相対的には健闘しているといえます。

今後、米中間の通商摩擦やインフレ圧力が消費行動に影響を及ぼす可能性もあり、上位所得層においても旅行やその他の裁量支出の見直しが進むことが予想されます。JPモルガン・チェースはこうした厳しい環境下でも市場シェアの拡大を見込んでいます。

*過去記事「JPモルガン・チェースは銀行界のエヌビディア?AI投資がもたらす未来とは

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