米国株式市場は4月9日に急騰し、ナスダック総合指数は12%超の上昇を記録しました。この中でも、半導体関連株は上昇の象徴とも言える存在となっています。
この急騰の背景には、ドナルド・トランプ大統領が中国を除くすべての国との間で、相互関税に90日間の一時停止を発表したことがあります。これにより、アメリカへの全輸入品に対して10%の基本関税が維持されるものの、景気後退の懸念がやや後退し、市場には安心感が広がりました。
半導体ETFが18%の急上昇
iシェアーズ・セミコンダクターETF(SOXX)は9日に最大18%上昇し、183ドルに達しました。これは2月19日からの下落局面で最大33%も値を下げた後の反発となります。半導体株は通常、景気変動に対して高い感応度を持つため、景気が冷え込むと企業や消費者のチップ需要が一気に減少し、利益も圧迫されやすい傾向があります。
しかし、トランプ大統領の関税政策の転換をきっかけに、株価は急速に元の水準に戻る動きを見せました。
下落時の価格が今後の買いシグナルに
もちろん、今後トランプ大統領が今回の発言を撤回した場合には、再び急落の可能性もあります。ただし、投資家にとっての朗報は、適正な買い水準の見通しが立ちやすくなったことです。
たとえば、SOXXは2月19日以降の最安値154ドルが支持線として意識されており、テクニカル分析の観点からも有効なエントリーポイントと考えられています。
さらに、半導体株の本質的な割安感が強調されています。関税政策の先行きが不透明で、景気の悪化リスクも残されている中でも、バリュエーションの観点からは依然として魅力的です。
エヌビディアのバリュエーションが示す投資妙味
アライアンス・バーンスタインのアナリストであるステイシー・ラスゴン氏は、仮に今後15%程度の売上減が生じた場合のエヌビディア(NVDA)の見通しを提示しています。
2008年の金融危機時には半導体業界の売上が25%、利益は50%も下落しましたが、今回はそこまで深刻ではないとの前提で、2025年の売上予想を15%下方修正した場合、エヌビディアの1株利益は約14%減の3.80ドル程度に落ち込む可能性があるとされています。
エヌビディアの株価は9日の上昇前に96ドルで取引されており、この利益水準でもPERは約25倍となります。過去3年間で最も低い水準は24倍だったことを考えると、依然として割安感はあります。9日の終値は114.33ドルで、PERは30倍。これは今年のレンジの中間点に位置しています。
今後の下落は再投資のチャンスに
仮に株価が再び96ドルまで下がったとしても、それ以上の大幅な下落は考えにくい状況です。さらに、エヌビディアの主要顧客である米国の大手テック企業がAI関連のデータセンターやチップへの投資を続ける中で、同社の業績は再び成長軌道に乗る可能性が高いと見られています。
このような背景から、エヌビディアをはじめとする半導体株は、今後も注目すべき投資対象となりそうです。
まとめ
現在の半導体株は、景気リスクをある程度織り込んだ水準にあり、政策の変化によっては大きな反発も期待できます。トランプ大統領の交渉姿勢が好感される限り、市場のセンチメントは前向きに保たれそうです。今後、株価が再び調整局面に入った際には、絶好の買い場となる可能性があるため、注視しておきたいところです。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA