4月2日のトランプ大統領による「解放の日」関税発表以来、米国株市場は大きく揺れ動いています。S&P500指数(SPX)は発表以降、約11%下落しており、ダウ平均(DJIA)も約10%の下落を記録しました。特に製造業株への影響が顕著で、投資家にとっては警戒が必要な局面が続いています。
しかし、現在のような下落局面こそ、高品質な製造業株を割安で手に入れる絶好の機会でもあります。関税の影響でコスト増加や需要減少、報復関税といった逆風が吹くなか、ウォール街のアナリストたちは注目銘柄を選定しています。
製造業株の下落傾向と過去の比較
米国みずほ証券の産業アナリストであるブレット・リンジー氏は、過去の主要な市場混乱時と比較しながら現在の状況を分析しています。ITバブル崩壊、リーマン・ショック、2011年の債務上限問題、コロナ危機、そして2022年の利上げ局面といった出来事において、製造業株の平均下落率は約40%でした。
今回の関税ショックによる下落は、4月7日の終値の時点で約18%とその半分程度にとどまっています。また、過去の事例では底を打つまでに平均で約300日を要していますが、2009年以降の3つの事例では160日前後に短縮されています。
今後の展開は予断を許さず、2011年の債務上限問題のように27%の下落に達する可能性や、2022年のように21%で下げ止まるケースも想定されます。
今注目すべき製造業銘柄とは
株価の下落により、いくつかの有望な製造業株が割安水準にあるとされています。リンジー氏が「買い」と評価する企業は以下の7社です。
- アメテック(AME)
- キャリア・グローバル(CARR)
- イートン(ETN)
- ハネウェル・インターナショナル(HON)
- ハッベル(HUBB)
- パーカー・ハネフィン(PH)
- バーティブ(VRT)
これらの企業は、AIの普及による電力需要の増加、米国での製造業回帰、航空宇宙分野の成長といった長期的トレンドの恩恵を受けています。4月2日以降の下落率は平均で13%、2025年の予想利益ベースの株価収益率(PER)は平均で19.9倍です。これはS&P500の約19.3倍とほぼ同水準です。
価格支配力を持つ企業や流通業者も有望
一方、ベアードのアナリスト陣は、価格決定力を有する企業やインフレの恩恵を受ける流通業者に注目しています。彼らが「買い」とする銘柄は以下の5社です。
- トリンブル(TRMB)
- インガソール・ランド(IR)
- ザイレム(XYL)
- WWグレインジャー(GWW)
- ウェスコ・インターナショナル(WCC)
この5社も4月2日以降で平均約12%の下落を記録しており、2025年の予想PERは平均24倍とやや高めですが、その分成長期待も大きいと評価されています。
投資判断には綿密な分析が必要
アナリストの推奨銘柄リストは、あくまで出発点に過ぎません。実際に投資を行う前には、それぞれの企業の事業内容、財務状況、成長戦略などを自分の目で確認し、慎重に判断することが求められます。
また、現在のような市場の反発局面では、「下落局面が終わった」と早合点しないことが重要です。2008年のリーマン・ショック時にも、市場は一時的に反発を見せつつも大幅下落が続きました。ボラティリティの高い相場では、冷静さと戦略的な目線が成功への鍵となります。