アメリカのソフトウェア企業、セールスフォース(CRM)の株価は2025年に入ってから低迷を続けており、さらにドナルド・トランプ大統領が新たな関税政策を発表したことで、状況は一段と厳しくなっています。トランプ大統領は4月2日に、アメリカの貿易相手国に対して10%以上の関税を導入する方針を発表し、これが世界中の株式市場に打撃を与えました。
株価下落を受け、取締役が株を大量購入
その翌日、セールスフォースの株価は6%下落し、255.23ドルとなりましたが、同日、同社の取締役であるオスカー・ムニョス氏が市場で株を買い増しました。同氏は3882株を平均価格257.28ドルで購入し、総額は100万ドルに上ります。米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、これによりムニョス氏の個人口座での保有株数は1万1843株となりました。
第4四半期決算の内容に失望感、市場からの売り圧力が強まる
セールスフォースは2月末に発表した第4四半期決算で、業績が市場予想と一致しなかったことが影響し、株価が下落しました。その後も株価は下げ止まらず、4月3日の終値時点で年初来の下落率は19%に達していました。
過去にも下落局面で買い増し、AIブームに資金が流れる中で
ムニョス氏が市場でセールスフォース株を購入したのは今回が初めてではありません。昨年6月にも、同氏は2051株を1株あたり243.69ドルで購入しており、その際も株価が低迷しているタイミングでした。当時は多くの投資家がソフトウェア企業から資金を引き上げ、エヌビディア(NVDA)などの人工知能チップメーカーへとシフトしていた時期です。
ムニョス氏の背景と市場への影響
ムニョス氏は以前、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス(UAL)の最高経営責任者(CEO)を務めており、2022年1月からセールスフォースの取締役に就任しています。今回の株式購入は、企業の将来性に対する同氏の信頼の表れと捉えることができます。
今回のような内部関係者による株式購入は、市場にポジティブなシグナルを与えることがあります。とくに大幅な株価下落時に実施された買い増しは、投資家心理の改善につながる可能性があります。