ソフトウェア株は買い時か?2025年の下落から見える投資チャンス

2025年に入ってから、米国の著名なソフトウェア企業の株価が大きく下落しています。政府支出の削減や景気後退への懸念、さらに人工知能(AI)による利益が思ったほど早く実現していないことが背景にあります。

たとえば、サービスナウ(NOW)の株価は年初来で21%下落しており、セールスフォース(CRM)は16%、アドビ(ADBE)は11%の下落となっています。業界全体を代表するETFである「iシェアーズ拡張テック・ソフトウェアETF(IGV)」も6%の下落です。

このような状況の中、今こそソフトウェアセクターに再び注目すべきタイミングなのでしょうか。著名証券会社のバーンスタインは、多くのソフトウェア企業が今後「効率化」への需要の高まりから恩恵を受ける可能性があると分析しています。ただし、すべての銘柄が同様に魅力的というわけではなく、慎重な銘柄選びが求められます。

サービスナウの短期的懸念と長期的成長機会

サービスナウは、売上の約8〜9%を米連邦政府から得ており、新設された「政府効率化省(Department of Governmental Efficiency)」によるレイオフの影響を大きく受ける可能性があります。同社は席数ライセンスモデルを採用しているため、職員数の減少に伴い契約ライセンス数も減少する懸念があります。

しかし、バーンスタインはこの影響は短期的なものであると見ています。政府機関が人員を減らした後、生産性向上のためにソフトウェアへの依存度を高める可能性があるため、サービスナウにとっては中長期的な追い風になると指摘しています。現在の株価は「珍しい割安水準」とされ、長期的には「次のマイクロソフト」と評価しています。短期的な値動きの荒さに耐えられる投資家にとっては、今がエントリーの好機かもしれません。

アドビにも見られる回復の兆し

アドビについても、バーンスタインは一定の期待を寄せています。とはいえ、同社の見通しに対する投資家のセンチメントは依然として不安定です。新たなレポーティング構造への移行に伴い、過去データの連続性が欠け、理解が難しくなっていることも混乱を招いています。

今後、AIによる年間売上が市場予想を上回る、もしくは安定した売上成長を示せば、投資家の信頼が回復し株価の上昇につながる可能性があります。ただし、それが現実化するには一定の時間がかかる見込みです。

サイバーセキュリティ銘柄にも注目

バーンスタインは、サイバーセキュリティ関連銘柄にも好意的です。パロアルトネットワークス(PANW)Zスケーラー(ZS)などがその代表です。これらの企業も座席ベースの課金モデルを採用していますが、連邦政府への依存度が相対的に低いため、影響も限定的と見られています。

パロアルトネットワークスは、好調だった近年の実績との高い比較ベースにより苦戦していますが、今後は業績の伸びやすい局面に入ると予想されています。一方、Zスケーラーは営業戦略の変更が功を奏し、2025年に入ってから株価が17%上昇するなど、堅調なパフォーマンスを見せています。

セールスフォースは慎重姿勢が必要

一方で、セールスフォースに対しては慎重な見方が示されています。バーンスタインは、同社を「アンダーパフォーム(市場平均を下回る)」と評価しています。話題のエージェントAI(Agentforce)への期待感が株価を支えていますが、その実用化にはまだ時間がかかる段階です。

また、同社全体の有機的な売上成長が鈍化しており、株価の持続的な上昇には懸念が残ります。


ソフトウェア株は慎重かつ戦略的な選択がカギ

2025年のソフトウェアセクターは、短期的な不透明感と長期的な成長機会が混在する状況です。政府支出の抑制やAIの進展に対する過度な期待が調整局面を招いていますが、それが逆に投資チャンスを生む場面でもあります。

バーンスタインのように、企業ごとのビジネスモデルや市場環境への対応力を見極めることで、リスクを抑えつつ魅力的な銘柄を見つけることが可能です。中でも、サービスナウやアドビ、パロアルトネットワークス、Zスケーラーといった企業は、今後の市場環境に適応しながら成長を遂げていく可能性があります。

投資においては「割安感」や「期待先行」に惑わされることなく、足元のファンダメンタルズと中長期の見通しを冷静に見極める姿勢が求められます。

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