米国の個人投資家向けメディアであるモトリーフールは、コーヒーチェーンのダッチ・ブロス(BROS)に注目しています。記事では、同社の中長期的な成長余地と現在の株価水準に投資妙味があるとの見解が紹介されていました。以下では、その内容を踏まえつつ、独自の視点から深掘りしていきます。
拡大戦略は堅実かつ成長志向
現在、ダッチ・ブロスは米国内12州に約982店舗を展開しており、その多くが西海岸地域に集中しています。2024年には151店舗を新規出店し、2025年はさらに160店舗の増設を予定しています(出典:同社決算資料)。
注目すべきは、店舗の多くが直営である点と、建設コストを抑えたシンプルな店舗設計にあります。新店舗の多くはドライブスルー中心で、800〜1,000平方フィートというコンパクトな作り。これにより、初期投資を抑えつつ、収益性の高いモデルを実現していると考えられます。
モトリーフールは、こうした店舗戦略がスターバックスやチポトレ、マクドナルドなどが過去に採用してきた拡大型モデルに類似している点に着目していました。拡大が急激すぎると、オペレーションの質が低下するリスクもある中、ダッチ・ブロスは自社キャッシュフローを活用して堅実に出店を進めており、この点は健全な経営判断として高く評価できます。
既存店の売上成長とモバイル戦略
2024年第4四半期には、既存店売上が前年同期比で6.9%の成長を記録。直営店に限定すると、9.5%の伸びとなっており、同社のオペレーションの効率性がうかがえます(出典:同社決算資料)。
成長を支えている要因の一つが、モバイル注文の導入です。現在、全店舗の96%でモバイル注文が可能となっていますが、実際の利用率はわずか8%にとどまっています。この数字はまだ低水準であり、今後の成長余地が大きいことを示唆しています。
モバイル注文の普及は、リピート率の向上だけでなく、注文プロセスの効率化にもつながり、利益率の改善にも貢献すると考えられます。特にロイヤルティプログラムとの統合が進めば、スターバックスのような顧客囲い込み戦略を模倣することが可能になります。
新たな成長ドライバーは「フード」
現在、ダッチ・ブロスの売上におけるフードの構成比はわずか2%にとどまっており、スターバックスの20%前後と比較しても、未開拓の分野であることが明らかです。
モトリーフールの記事によると、同社は一部店舗で新しいフードメニューを試験的に導入しており、一定の成果を得ているとしています。ただし、バリスタの作業効率や顧客対応スピードに影響が出ないよう、慎重に展開を進めているとのことです。
特に朝の時間帯における「飲料+軽食」需要への対応は、今後の売上拡大において極めて重要な要素といえます。他社に顧客を奪われていた時間帯の取り込みが進めば、同一店舗あたりの売上向上に直結します。
バリュエーションと投資妙味
最近の市場全体の売りにより、ダッチ・ブロスの株価は過去最高値から約25%下落しています。これにより、ダッチ・ブロスの株価売上倍率(P/Sレシオ)は、2025年の予想売上に対して約4.9倍、2026年予想に対しては4.0倍となっています(出典:YCharts)。これに対し、スターバックスのP/Sレシオは同期間で約3.0倍と報告されています。
この差について、モトリーフールは「成長企業であるダッチ・ブロスが成熟企業よりも高い評価を受けるのは当然」と指摘していますが、これは頷ける意見です。実際、今後10~15年を見据えた場合、店舗数の拡大余地、既存店売上の成長、さらにはフード領域の拡張といった成長ドライバーを複数抱えている点は魅力的です。そのため、現在の株価水準は、全国展開を目指す成長ストーリーに期待する投資家にとって魅力的なエントリーポイントといえます。
まとめ:長期的視点で注目したい成長株
ダッチ・ブロスは、スターバックスに比べてまだ発展途上の企業ではありますが、だからこそ大きな成長余地があります。シンプルな店舗モデル、健全な財務運営、今後のテクノロジー活用やフードメニューの拡充といった多面的な戦略により、中長期的には米国全土でのプレゼンス拡大が期待されます。
市場全体の調整によって株価が下落している今は、成長ストーリーに期待する投資家にとって、投資を検討すべきタイミングのひとつといえるかもしれません。
*過去記事「外食産業の新星、ダッチ・ブロスの成長が加速」