今週、シリコンバレーでは、開発者やウォール街のアナリスト、投資家、ジャーナリストが一堂に会し、エヌビディア(NVDA)の年次開発者会議「GTC(GPU Technology Conference)」が開催されます。近年大きな注目を集めている同会議ですが、今年のGTCはこれまでとは異なる雰囲気に包まれています。
AI関連銘柄のブームは、新政権発足後に大きな転換を迎えました。関税の影響や景気の減速、さらにはデータセンターの過剰建設の懸念が高まり、多くの半導体関連銘柄が下落傾向にあります。特にエヌビディアの株価は、中国のAI企業「ディープシーク」が低コストでAIモデルを開発したとの発表を受け、大きく下落しました。このニュースが伝えられた1月には、エヌビディアの時価総額が1日で6000億ドル近く失われ、その後も株価は回復に苦戦しています。
エヌビディアのGTCカンファレンスの重要性
エヌビディアは、GTCカンファレンスを活用して、成長の見通しやAI分野での優位性を市場にアピールしようとしています。CEOのジェンスン・フアン氏は、テクノロジー業界でカリスマ的な存在となり、同氏の基調講演はアップル(AAPL)の共同創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の発表と同じくらい注目されています。
GTCでは、近い将来の製品やAI・ロボット工学に関するフアン氏のビジョンが語られる見込みです。現在の「ブラックウェル」プラットフォームと、それに続く「ブラックウェル・ウルトラ」の進化に関する発表があると予想されており、投資家は、後継製品である「ルービン」がよりスムーズに導入されるのかに注目しています。
ブラックウェルの課題とルービンの展望
エヌビディアの「ブラックウェル」プラットフォームの導入は、同社の期待ほどスムーズに進んでいないことが明らかになっています。サプライチェーンの問題によりボラティリティが高まっており、投資家はこの点を非常に懸念しています。そんな中、バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏は、顧客向けメモで「エヌビディアはこの課題を乗り切ったようだ」と述べています。
3月18日のフアン氏の基調講演では、「ブラックウェル」システムの新機能が発表されるとともに、「ルービン」の進化についての詳細が明らかになる可能性が高いと予想されています。また、高速光ネットワークや水冷技術の進歩など、周辺技術についても言及されるかもしれません。
エヌビディアのパートナー企業の動向
昨年のGTCでは、フアン氏がエヌビディアの主要パートナー企業をステージ上で紹介し、それが株価の急騰につながりました。今年も同様の演出が期待されており、「ブラックウェル」の成功を強調する場となる可能性が高いと思われます。Moor Insights & Strategiesの主席アナリスト、パット・ムーアヘッド氏は、「チップだけでなく、ラック全体を含めたルービンのアーキテクチャに関する技術的な詳細が発表されるだろう」と述べています。
AIデータセンター市場の懸念とエヌビディアの戦略
エヌビディアは、1月のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で、ロボティクス・ソフトウェア・プラットフォーム「コスモス」を発表しました。これは、ロボットや自律走行車の開発を加速させることを目的としています。また、エージェント型AIの活用による業務効率化についても説明しました。
一方、AIデータセンターの建設ブームが減速する兆候があるのではないかと投資家の間で懸念が広がっています。関税の影響による景気減速が、データセンター向けGPUの需要を抑制するのではないかとの見方もあります。投資家は、GTCの基調講演やアナリスト向けの質疑応答の中で、この点についての示唆がないか注視しています。
エヌビディアは、直近の決算説明会で、現在の需要に見合うだけの「ブラックウェル」システムを供給できないと述べており、この供給不足が今後の業績にどのような影響を与えるのかも注目されます。
AI市場の今後とエヌビディアの展望
ムーアヘッド氏は、「投資家にとって最大の疑問は、AI市場の成長を鈍化させる可能性がある要因は何かという点だ」と指摘しています。GTCは、エヌビディアがこれらの懸念にどのように対応し、今後の戦略を示す重要な場となりそうです。
エヌビディアの株価は依然として不安定な状態が続いていますが、GTCカンファレンスでの発表が市場にどのような影響を与えるのか、引き続き注視する必要があります。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA