ネットフリックス(NFLX)の株価は、モフェット・ナサンソンのアナリストであるロバート・フィッシュマン氏による投資判断の引き上げを受け、3月17日の米国市場で約4%上昇しました(午後1時過ぎ現在)。フィッシュマン氏は、同社の投資判断を「ニュートラル」から「買い」に格上げし、通期の目標株価を850ドルから1,100ドルに引き上げています。
ネットフリックスは、ストリーミング市場での圧倒的な地位を確立し、競争に勝利したと見られています。しかし、今後の成長余力についてはどの程度残されているのでしょうか。最近の事業再構築により成長を再活性化した同社ですが、今後数年間でさらに売上を伸ばし、利益率を高めることができると考えられています。
ネットフリックスの株価動向と市場の影響
ネットフリックスの株価は、市場全体の調整を受けて一時的に下落していました。1ヶ月前には1株1,000ドルを超えて取引されていたものの、現在は52週高値から10%以上の下落を記録しています。これは、ハイテク株全体が売り圧力を受けている影響を受けている部分が大きいと見られます。
しかし、フィッシュマン氏はネットフリックスの収益モデルの強さを評価し、今後の見通しは明るいと見ています。同社の成長は、加入者数の拡大とともに、より高い収益化戦略によって支えられると予想されています。
グローバルでの強力な加入者基盤
ネットフリックスの現在の加入者数は、全世界で約3億200万人に達しています。この膨大な加入者基盤により、同社はコンテンツ制作に多額の投資を行う余裕を持っています。ただし、2025年以降、加入者数の公表を停止すると発表しており、今後はより収益性の高い指標に焦点を移すことが予想されます。
フィッシュマン氏は、ネットフリックスのコンテンツ戦略がエンゲージメントを高め、新たな加入者を呼び込む好循環を生み出していると述べています。これが同社の持続的な競争優位性を支える要因となっています。
広告モデルの拡大と新たな成長戦略
ネットフリックスは、2年前から広告付きプランの提供を開始し、新たな収益源を確立しました。2025年も広告事業の拡大が最優先事項の一つとなっており、広告主向けのサービス強化が進められる予定です。
また、同社は2025年初めに、米国内のストリーミング料金を値上げしました。経営陣は、映画やテレビ番組の配信がこれまで以上に充実していることを理由に挙げています。さらに、スポーツやライブイベントの配信も強化されており、新たな視聴者層を獲得するための施策が進行中です。
スポーツコンテンツの強化
スポーツコンテンツへの投資も、ネットフリックスの成長戦略の重要な要素となっています。2024年11月に配信されたジェイク・ポール対マイク・タイソンの試合は、全世界で1億800万人以上が視聴し、ストリーミング史上最大のスポーツイベントとなりました。
アメリカ国内のスポーツ市場では、2024年のスーパーボウルが1億2,400万人の視聴者を集め、NFLの試合の平均視聴者数も3,000万人を記録しました。ネットフリックスもこれらの視聴者層を取り込み、スポーツコンテンツの拡充を進めています。特に、WWE Rawの配信開始やUFCの放映権獲得の可能性が注目されています。
過小評価される収益化の可能性
フィッシュマン氏は、ネットフリックスの規模がまだ市場で過小評価されていると指摘しています。同社は今後、エンゲージメントの高さをより効果的に収益につなげる戦略を展開する見込みです。
2024年には、同社の売上が16%増加し、営業利益率は600ベーシスポイント増の27%に達しました。また、新規加入者数は4,100万人に上り、2020年のパンデミック時の3,660万人を上回る記録的な成長を遂げました。この成長の一因として、パスワード共有の取り締まりが挙げられます。
今後の値上げ余地と利益率の向上
モフェット・ナサンソンの分析によると、ネットフリックスの視聴1時間あたりの売上は0.40ドルであり、パラマウント+やワーナー・ブラザース・ディスカバリーと比べるとまだ低い水準にあります。これは、今後の値上げの余地が十分にあることを示唆しています。
フィッシュマン氏によると、ネットフリックスの営業利益率は2025年に29.5%に達し、2030年には最終的に40%に達する可能性があると予想されています。これは、放送局並みの利益率となる水準です。
リスク要因と市場の不確実性
ネットフリックスの成長にはいくつかのリスク要因も存在します。特に、広告収入の拡大が期待通り進まなかった場合や、さらなる値上げが市場に受け入れられなかった場合、収益成長にブレーキがかかる可能性があります。
また、加入者数の増加が鈍化し、コンテンツ制作コストが急増した場合も、利益率の向上が困難になるリスクがあります。さらに、マクロ経済環境が悪化すれば、広告市場の縮小が広告売上に影響を与える可能性も指摘されています。
ウォール街の評価と目標株価
ブルームバーグの最新コンセンサス予想によると、ネットフリックスの目標株価の中央値は1,090ドルで、同社をカバーするウォール街のアナリスト44人が「買い」と評価しています。一方、「ホールド」は13人、「売り」はわずか2人にとどまっています。
全体的に見て、ネットフリックスは依然として成長余地が大きく、広告事業やスポーツコンテンツを活用した新たな収益化の取り組みが進められています。今後も株価の動向に注目が集まりそうです。
*過去記事はこちら ネットフリックス NFLX