AI株の押し目買い戦略:バロンズが提案する分散投資の重要性

  • 2025年3月11日
  • 2025年3月11日
  • BS余話

2025年に入り、人工知能(AI)関連の株式市場は大きな調整局面を迎えています。特に、半導体(チップ)株、AIソフトウェア株、さらにはデータセンターを支える公益事業や産業株までが下落しました。

米国の著名投資メディア、「バロンズ(Barron’s)」は、AI関連銘柄の急落を受け、投資家がどのように対応すべきかについての分析を掲載しました。この記事では、バロンズが示した見解を紹介しながら、AI関連銘柄の適切な投資戦略について考察していきます。


エヌビディアの急落—AI市場の中心が揺らぐ

AIブームを牽引してきたエヌビディア(NVDA)は、12月の史上最高値から約30%下落しています。AI分野での圧倒的な地位を誇るエヌビディアですが、現在の市場環境では、他の半導体企業との競争が激化し、シェアを奪われるリスクが高まっています。

例えば、データセンター向けのチップ市場では、ブロードコム(AVGO)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が存在感を強めています。もし、これらの企業が市場シェアを拡大した場合、エヌビディアの成長スピードが鈍化する可能性があるとバロンズは指摘しています。


エヌビディアに集中投資するのはリスクが高い理由

バロンズの記事では、「エヌビディア1社に全力投資するのはリスクが高い」と述べられています。その理由は以下の通りです。

  1. 競争が激化
    ブロードコムやAMDが、AI関連の半導体市場でシェアを伸ばしている。
  2. 市場全体の影響を受けやすい
    AI関連銘柄は互いに連動して動く傾向が強く、特定の銘柄に投資すると市場の変動に大きく影響を受ける可能性がある。
  3. 長期的な成長が不透明
    エヌビディアの成長が続く可能性は高いものの、ブームが落ち着いた後の成長率が予測しにくい。

ソフトウェア銘柄への投資も慎重に

半導体だけでなく、AI関連のソフトウェア企業も2025年は試練の年となっています。マイクロソフト(MSFT)は、2025年の売上成長率が鈍化するとの見通しが出ています。

また、AI関連のソフトウェア市場はまだ発展途上であり、どの企業が主導権を握るかは不透明です。バロンズは、マイクロソフト単独での投資はリスクがあり、他のAIソフトウェア企業もポートフォリオに加えるべきだと述べています。


投資家に求められる戦略は「分散投資」

バロンズの記事では、AI関連銘柄の急落時には「分散投資」が最適な戦略であると強調されています。
AI関連株は互いに強く連動して動く傾向がある」と記事は指摘。半導体企業の株価は、公益事業株と高い相関を持っており、また、AIソフトウェア企業の株価も、公益事業株とほぼ同じ動きをしているとしています。これは、AI関連の成長テーマが市場全体で意識され、投資家が同じような判断を下していることを意味します。

このように、AI関連株は全体的に強く連動しているため、個別株に集中投資するのではなく、AI市場全体にエクスポージャーを持つことが重要だとバロンズは主張しています。

具体的には、以下のカテゴリーに分けて投資することが推奨されています。

① チップ(半導体)関連銘柄

  • エヌビディア(NVDA)
  • ブロードコム(AVGO)
  • アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)
  • マイクロン・テクノロジー(MU)
  • テラダイン(TER)
  • アプライド・マテリアルズ(AMAT)
  • ラム・リサーチ(LRCX)
  • KLAコーポレーション(KLAC)

② AIソフトウェア関連銘柄

  • マイクロソフト(MSFT)
  • オラクル(ORCL)
  • セールスフォース(CRM)
  • アドビ(ADBE)
  • サービスナウ(NOW)
  • パランティア・テクノロジーズ(PLTR)

③ 電力・産業関連銘柄

  • イートン(ETN)
  • エヌベント・エレクトリック(NVT)
  • ジェネラック(GNRC)

バロンズの記事は、これらの企業は異なる分野に属しているものの、AI市場の成長に大きく関わっており、長期的な投資対象として魅力的だとしています。


今後のAI市場の成長見通し

バロンズは、ファクトセットのデータをもとにAI市場の成長は今後も続くと予測しています。

  • チップ関連銘柄の売上は、今後3年間で毎年2桁成長が見込まれる
  • データセンター向け電力市場は、公益事業セクターの売上成長率が1桁台後半
  • 世界的にAIの導入が進むため、景気低迷があっても長期的な成長は見込める

一時的な市場の調整があったとしても、AI関連銘柄の成長の余地は依然として大きいと考えられます。


まとめ:バロンズが提案する「連動するAI銘柄のバスケットを買う」戦略

バロンズの記事では、「エヌビディア単独への投資ではなく、半導体、ソフトウェア、電力、インフラを含む幅広いAI関連企業に分散投資することが重要」と結論づけています。

「連動するAI銘柄のバスケットを買う」という戦略は、特定の企業のリスクを抑えながら、AI市場全体の成長の恩恵を受けるための有効な方法です。エヌビディアが市場を支配し続けるか、競合企業が成長するか、またはAIソフトウェアやインフラが新たなリーダーとなるかは予測が難しいものの、分散投資をすることで、どのシナリオが実現しても安定したリターンを期待できます。

これからAI関連株を買うなら、単独銘柄に絞るのではなく、バロンズの提案する分散投資戦略を検討してみてはいかがでしょうか。

(参考記事:Barron’s「Don’t Go All-In on Nvidia Stock. Here’s How to Play the AI Trade Now.」)

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