アップル株が2年半ぶりの大幅下落、要因はiPhone販売予測の下方修正とAI機能の遅れ

3月10日の米国市場において、アップル(AAPL)の株価が大きく下落しました。これは、2022年9月29日以来、約2年半ぶりとなる最大の下げ幅となります。テクノロジー株全体が売られる展開の中、アップルの株価は前営業日比4.85%の下落を記録し、ナスダック総合指数の4%の下落を上回る動きとなりました。

また、アップルは、いわゆる「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる主要テクノロジー株の中でも3番目に悪いパフォーマンスを示し、ダウ平均株価(DJIA)の下落に対しても約71ポイントの押し下げ要因となりました。

iPhoneの販売予測が下方修正、AI機能の導入遅れが影響

今回の下落の背景には、シテのアナリスト、アティフ・マリク氏が2025年のiPhone販売予測を下方修正したことが挙げられます。これまで、同氏は2025年のiPhone販売台数が前年比5%増の2億4000万台に達すると見込んでいましたが、新たに2%増の2億3200万台へと予測を引き下げました。

この修正の要因として、アップルが期待されていたSiriのアップグレードを遅らせることを発表した点が挙げられます。本来、Siriの「アップル・インテリジェンス」機能の強化は、iPhoneの買い替え需要を押し上げる要素と考えられていました。しかし、ブルームバーグの報道によると、当初4月から5月に予定されていたSiriの大規模なアップデートは「今年中」へと延期されたとのことです。

このSiriのアップグレードでは、画面認識、パーソナルコンテキストの活用、アプリとの深い統合が導入される予定でした。これらの機能が加わることで、ユーザーの利便性が大きく向上すると見込まれていましたが、延期が決定したことで市場の期待が後退し、株価に影響を与えました。

米中貿易摩擦による関税の影響も懸念材料

さらに、アップルは中国での製造に依存しているため、米中貿易摩擦による関税の影響を受けやすい状況にあります。現在、アップルは関税の免除を求めていますが、まだ正式な決定は下されていません。

マリク氏によれば、仮にアップルが関税の免除を受けられなかった場合、同社の売上総利益率(グロスマージン)に対して1.7ポイントのマイナス影響を与える可能性があるとのことです。この計算は、アップル製品の90%が中国で製造され、そのうち40%が米国市場向けであるという前提のもとに行われています。

2025年以降の業績予測も引き下げ

これらの要因を踏まえ、マリク氏はアップルの2025年、2026年、2027年の利益予測をそれぞれ約1%引き下げました。ただし、同氏はアップルの株に対する「買い」の評価を維持し、目標株価を275ドルに据え置いています。

今後の投資戦略

今回の下落により、アップルの株価は短期的には不安定な動きを見せる可能性があります。しかし、Siriのアップデートが完了し、iPhoneの販売が回復すれば、再び上昇トレンドに戻ることも期待されます。また、米中関係の進展によって関税の問題が解決すれば、業績へのマイナス要因が軽減されます。

投資家にとっては、今回の下落を一時的な調整と捉えるか、さらなる下落リスクを警戒するかの判断が求められる局面となっています。特に、AI関連機能の導入遅れが今後の販売戦略にどのような影響を与えるかを注視する必要があります。

まとめ

  • アップルの株価は3月11日に4.85%下落し、2年半ぶりの大幅な下げを記録
  • iPhone販売予測が5%増から2%増へと引き下げられた
  • Siriのアップグレード遅延が買い替え需要の低下を招く可能性
  • 米中貿易摩擦による関税の影響が売上総利益率にマイナス要因
  • 2025年以降の業績予測も下方修正されたが、目標株価は据え置き

*過去記事はこちら アップル AAPL

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