米国の投資メディアであるバロンズ(Barron’s)は、最新の記事で米ドルの急落とその影響について詳しく報じています。記事によると、米ドル指数(DXY)は過去4日間で3.5%下落し、これは2024年11月以来の最悪の下落幅となっています。特にユーロに対しては4.4%の下落を記録しており、為替市場の動向が企業業績に与える影響が注目されています。
バロンズは、米ドルの下落が特に海外売上比率の高い企業にとってプラスに働く可能性があると指摘しています。ドル安により、海外での売上が米ドル換算時に増加し、収益の押し上げにつながるからです。一方で、関税の影響には注意が必要であり、貿易摩擦の激化がコスト増加をもたらすリスクもあるとしています。
バロンズの記事では、ファクトセットのデータを基に海外売上比率が高く、かつバリュエーション面でも魅力的なS&P500企業、具体的には予想株価収益率(P/Eレシオ)が市場平均以下または同程度の企業をピックアップしています。
予想株価収益率(P/Eレシオ)とは?
企業の予想株価収益率(P/Eレシオ)とは、株価がその企業の1株当たりの予想利益(EPS)に対して何倍になっているかを示す指標です。
計算式は以下の通りです。
P/Eレシオ=株価 ÷ 1株当たりの予想利益(EPS)
P/Eレシオが低いほど株価が割安とされ、高いほど割高と見なされることが一般的です。ただし、業界ごとに適正なP/Eレシオの水準は異なるため、単純な比較だけでなく業界平均や成長性も考慮する必要があります。
海外売上比率の高い米国企業(バロンズの記事より)
ラスベガス・サンズ(LVS)
- 売上:110億ドル
- 海外売上比率:100%
- 予想P/Eレシオ:17
ラスベガス・サンズは、マカオやシンガポールでカジノ・リゾートを運営する企業で、売上の100%を海外から得ています。そのため、ドル安の影響を最も大きく受ける企業の一つと考えられます。
ラム・リサーチ(LRCX)
- 売上:160億ドル
- 海外売上比率:93%
- 予想P/Eレシオ:20
半導体製造装置メーカーであるラム・リサーチは、台湾や韓国の顧客向けの売上が大きな割合を占めています。アジア市場での強い需要に加え、ドル安が追い風となる可能性があります。
フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)
- 売上:380億ドル
- 海外売上比率:88%
- 予想P/Eレシオ:21
フィリップ・モリス・インターナショナルは、タバコ製品をグローバルに販売している企業です。米国市場には直接参入しておらず、全売上を海外で生み出しているため、ドル安の恩恵を最も受けやすい企業の一つといえます。
アプライド・マテリアルズ(AMAT)
- 売上:280億ドル
- 海外売上比率:86%
- 予想P/Eレシオ:16
半導体やディスプレイ製造装置を手掛けるアプライド・マテリアルズは、特にアジア市場での売上が多いため、ドル安が業績を押し上げる可能性が高い企業といえます。
ニューモント(NEM)
- 売上:190億ドル
- 海外売上比率:85%
- 予想P/Eレシオ:13
世界最大級の金鉱企業であるニューモントは、金価格の上昇に加えて、ドル安の影響を強く受ける企業の一つです。特に、金はドル建てで取引されるため、ドル安時には金価格の上昇を促す要因にもなります。
ボルグワーナー(BWA)
- 売上:140億ドル
- 海外売上比率:84%
- 予想P/Eレシオ:7
自動車部品メーカーのボルグワーナーは、欧州やアジア市場での売上が大きい企業です。特にEV(電気自動車)関連の事業が成長しており、ドル安の影響をプラスに受けやすいと考えられます。
ジェイビル(JBL)
- 売上:270億ドル
- 海外売上比率:83%
- 予想P/Eレシオ:15
電子機器の受託製造サービス(EMS)を提供するジェイビルは、アジア市場を中心に事業を展開しています。ドル安の恩恵を受ける可能性が高い企業の一つです。
オン・セミコンダクター(ON)
- 売上:70億ドル
- 海外売上比率:82%
- 予想P/Eレシオ:16
自動車向けや産業用半導体を手掛けるオン・セミコンダクターは、EV市場の拡大とともに成長が期待される企業です。海外市場での売上が多く、ドル安がプラスに働く可能性があります。
シュルンベルジェ(SLB)
- 売上:540億ドル
- 海外売上比率:82%
- 予想P/Eレシオ:11
エネルギー関連サービスを提供するシュルンベルジェは、中東や南米市場での売上が大きいため、ドル安の影響を大きく受ける可能性があります。
FMC(FMC)
- 売上:42億ドル
- 海外売上比率:76%
- 予想P/Eレシオ:11
農業化学品メーカーであるFMCは、新興国市場での成長が期待されており、ドル安の恩恵を受けやすい企業の一つです。
まとめ:ドル安環境を活かした投資戦略
バロンズの記事が指摘しているように、ドル安の進行は海外売上比率の高い企業にとって追い風となります。特に、半導体、エネルギー、消費財、カジノリゾート関連の企業は、為替の影響を大きく受けるため、今後の投資対象として注目される可能性があります。
ただし、貿易摩擦や関税政策の影響も考慮する必要があり、市場の変動に対して慎重な投資判断が求められます。バロンズの記事を参考にしながら、今後の投資戦略を考えていくことが重要です。