S&P500の調整は一時的?市場の変化と今後の投資戦略

  • 2025年3月7日
  • 2025年3月7日
  • BS余話

米国株の最新動向を探るうえで、多くの投資家が参考にするのが「バロンズ(Barron’s)」です。3月7日付けの最新記事「The S&P 500 Has the Hiccups. How Investors Should Think About Long-Term Returns.」では、S&P500指数(SPX)の足元の動向と、今後の市場の見通しについて詳しく解説されていました。S&P500は2025年に入ってやや下落しているものの、過去10年間で資産を3倍以上に増やしており、これを「危機」とみるべきではないという見方が示されています。

一方で、市場の内部では変化の兆しが見えています。S&P500均等加重指数(SP500EW)が通常のS&P500よりも好調であることや、バリュー株のパフォーマンス向上、ヘルスケアセクターの復調など、市場のリーダーシップに変化が生じる可能性が指摘されています。

本記事では、バロンズの記事の内容を紹介しながら、今後の市場の見通しと投資戦略について考察していきます。

S&P500均等加重指数が通常の指数を上回る

バロンズの記事によると、2025年に入りS&P500均等加重指数(SP500EW)のパフォーマンスが通常のS&P500を上回っているとのことです。これは、この指数が時価総額の大きなハイテク企業の影響を受けにくいことが要因とされています。

さらに、ヘルスケアセクターが昨年の不調から一転して、今年は市場をリードする展開になっています。2月にはバリュー株がグロース株を3.9ポイント上回るリターンを記録し、1979年以降のデータで「上位5%」に入る好成績でした。

また、米国株を欧州や中国株が上回るパフォーマンスを見せている点も、注目すべきポイントです。米国株の強さが長年続いてきましたが、短期的には地域ごとの成績に違いが出る可能性もあります。

米国市場の優位性は今も続くのか?

バロンズの記事では、ロンドン・ビジネス・スクールやケンブリッジ大学の教授らによる125年分の市場データの分析が紹介されています。

2000年の時点で、米国市場は世界市場の49%を占めていましたが、2024年には64%にまで拡大し、先進国市場では73%に達しています。これは、過去100年以上にわたる米国市場の圧倒的な成長を示しています。

しかし、歴史を振り返ると、かつて世界市場をリードしていた国が後退する例も少なくありません。例えば、1900年には世界市場の24%を占めていた英国市場は、現在ではわずか3%にまで低下しています。

こうした歴史を踏まえると、今後も米国市場の優位性が続くとは限らず、慎重な視点を持つことが重要とされています。

日本市場のバブルとその後

記事では、日本市場の歴史にも触れられています。1989年には、日本市場が世界の時価総額の40%を占め、米国市場(29%)を上回る規模になっていました。当時は「日本が世界経済のリーダーになる」と考えられていましたが、これは巨大な資産バブルだったことが後に判明しました。

現在、日本市場の世界に占める割合は6%以下にまで縮小しています。こうしたデータを見ると、「現在の米国市場もバブルなのではないか?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、米国市場が過去100年以上にわたって強さを維持してきた点を考慮すると、すぐに崩壊する可能性は低いとも考えられます。

国際分散投資の意外な結果

1974年の研究により、国際分散投資がリスクを低減すると考えられるようになり、多くの投資家が海外市場に資金を分散させました。

しかし、バロンズの記事によると、米国の投資家が国内市場に集中投資していた方が、リスク調整後リターンは高かったことが分かっています。

これは、1980年、1990年、2000年のどの時点から投資を始めても同じ傾向が見られました。米国市場が他国市場よりも安定的に高いリターンを生み出しているため、分散投資が必ずしもリターン向上につながらなかったのです。

そのため、国際分散投資は理論的には有効ですが、実際のパフォーマンスには注意が必要です。

債券は低リターンだが、必要な資産クラス

バロンズの記事では、債券の長期的なリターンの低さについても触れられています。

・過去125年間における政府債券の実質リターンは年率0.9%
・株式市場の暴落時には役立つが、長期的な成長には向かない
1940年に債券を購入した投資家は、元本回復に50年以上かかった

これらのデータを見ると、「債券は不要では?」と思うかもしれませんが、債券を持つ最大のメリットは、株式との相関が低い点にあります。市場の大きな調整局面でポートフォリオを守る役割を果たすため、資産配分においては一定割合を持っておくことが推奨されています。

米国市場の集中度は本当に高いのか?

最近では、米国の上位3銘柄(マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA))が市場の19%を占めるようになりました。これは過去92年間で最も集中度が高い状態です。

しかし、バロンズの記事では「市場の集中度が高くても、それが悪いとは限らない」と指摘されています。例えば、1900年には鉄道株が市場の63%を占めていましたが、その後も株式市場は成長を続けました。

また、フランス(上位3銘柄で市場の23%)、ドイツ(36%)、韓国(40%)、台湾(59%)などと比較すると、米国市場の集中度はむしろ低い方であることも指摘されています。

まとめ

バロンズの最新記事では、S&P500の一時的な調整や市場の変化について詳しく分析されています。

・S&P500均等加重指数が通常の指数を上回り、セクター循環が発生
・米国市場の優位性は続いているが、過去の例を考慮すると絶対ではない
・国際分散投資の効果は限定的だった
・債券はリターンが低いが、ポートフォリオに必要
・米国市場の集中度は、他国と比較するとそれほど高くない

今後も市場の動きを注視しつつ、適切な投資戦略を考えることが重要です。

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